第3話
私はこの春に、河原町高校というところに入学した。
この高校は、昨年から車椅子を普段使う子を積極的に受け入れている。1学年4クラスあり、昨年度は試験的に4名が入学した。今年は、各クラス2名ずつ、計8名の子が入学している。
今までなら、私たちのような子は、特別支援学校のように一般の生徒とは区切られた高校に入学することが多かったが、社会の変化が学校にも影響してきたようだ。
外側の形は変化したけど、内側はまだあまり変わっていないようにも思えるが、形から入るのも大事なんだろう。
でも昨年入学した先輩方が、とっても魅力的な人たちで、何回か世間で話題になることをやっていた。佐倉二柚先輩、茅野七津先輩、古賀愛来先輩、悠木春陽先輩は2年になっても学校で必ず話題になっている。
同様に車椅子に乗る私たちだけでなく、そうじゃない子からも先輩たちは憧れられている。
4人はインクルージョン部という部活動を始めて、雑誌に取り上げられたり、今まではこんな身体ではやらなかったであろうことにたくさん挑戦していた。
普通に水着でビーチに行ったり、コミケでコスプレしたり、何か特別のことではないのだけれど、車椅子に乗った子がこんなことをやるんだ、という世間の理解を変えて行った。
簡単なようで簡単ではない。そりゃあ、みんなに憧れられるだろうな。
私には何の取り柄もないし、ピアノだって満足に弾けないし。それでもこうやって私に声をかけてくれるのは本当にうれしい。
今年入学した8人も個性的だった。
1年生のリーダー格である1組の吉川葵をはじめ、個性的な子がそろっている。でも、車椅子に乗っている、という特徴だけでひとまとめにされて、同じような人間と思われてしまうことが多い。
まあそれは、女子高生という括りでまとめられるのと同じと言えば同じだけど、私たちは女子高生とも思われないことが多い。
それ以前に、障害のある子、なのだ。
2年目ということで、学校側も受け入れに慣れてきたようだと話をしていたし、先輩方も同級生も車椅子を使う使わないに関わらず、フレンドリーに接してくれる。
中学までのような、腫れ物に触るような、扱われ方はあまりされない。それが少し心地いい。
だから、この高校に来てよかった。
入学後、すぐに二柚先輩たちが、私たちの歓迎会を開いてくれたのだ。
昨年あれだけの活動をしてきた人たちだ。自分一人ではやってみようとさえ思わないことをやってのけた。雑誌に載ったり、インストでいいね!を、たくさんつけられたりした。今も部活動の紹介スライドを見て心が熱くなった。
「いや皆さん目標があると言うか、目の色が違うと言うか、なんかやってやるぞ!って、雰囲気満々なんだよね。私たちは行き当たりばったりで今までやってきたから」
「えー、そんなことありませんよ!」
「でも、もし興味があったら紹介するからね。あと、私もバンドやってるところ見てみたいし、出来たら紬ちゃんと一緒にライブ観に行きたいな」
ライブは一度観に行ってみたいかもしれない。クラシックのピアノ協奏曲では他の楽器が入るが、やはりピアノがメインだ。バンドだとピアノがメインというわけではないだろう。そんな演奏を直接聞いたことはない。だから、興味はある。
「はい、ありがとうございます」
「うん、それじゃあまた今度ね!」
バンドかー。誰かと一緒に音を奏でるのはきっと楽しいんだろうな。でも私の場合は演奏できる曲が限られちゃうから、うまくいかないと思う。それで周りに迷惑をかけて空気が悪くなるのも嫌だし。
結果が明らかなものに、あえて首を突っ込むこともないのかなと思う。
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