第2話

「紬ちゃんってさ、ピアノ弾くんだって?」

「あ、はい、少し習っていました」

「左手だけ?右手の動き弱いもんね。結構上手いって聞いたけど」

「いや全然そんなことないですよ。片手なんで、弾ける曲も限られてしまいますから」


 インクルージョン部の新入部員歓迎会の席で、二柚先輩が突然私にそう尋ねてきた。私がピアノをやっていること、どこで聞いたんだろう?

「あのね、私の同級生がガールズバンドをやっていて、キーボードの子が抜けちゃって困ってるみたいなの。そういうのは興味ないかな?」

「えー、バンドですか・・私、他人と組んで演奏したことって無いんで、ちょっと難しいかもですね」

「そうかー、無理にはいいんだけど、練習を見に行ってみたりしないかなーと思って。もし行くなら私も一緒に行きたいと思っているの」

「バンドって、みんな両手使える人ですよね?それに片手でついて行くのはけっこう至難の技で・・」

「うー、でも紬ちゃんならなんか出来そうな感じがするんだけどな」


 何を根拠にこんなことを言うのだろうか、この人は。


「なんか今年の1年生、雰囲気が違うと言うか・・。私たちのようにお遊び半分でお気楽に生きている感じじゃないもの。あはは、なんか変なこと言ってるね」

「先輩たちがお気楽だなんて・・。私たちの憧れですよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る