第4話

キヨシは、大学院では、東海道五十三次を研究したが、学歴なんて活かされず、学歴とは関係のない今の食品メーカーに勤務している。

 会場のみんなは、「何だ、今更和歌かよ」とかの雰囲気になっていたが、それでも、拍手をした。

 しかし、一人だけ、スマホの写メで、カシャとキヨシの写真を撮った。

 それは、ミユキだった。内田真礼に似たミユキだった。

 忘年会は、マジックをした30代の入山が、チャンプになった。そして、キヨシは、駄目だった。人気なんてなかった。

 だが、何故か、一番、最後に票が一つだけ入っていた。みんなは、マジックをした入山と二次会で飲みに行ったが、キヨシは、帰ろうとした時だった。

 会社の忘年会から帰ろうとした。そこに、ミユキが、いた。

「三条さん」

「はい」

「今日の短歌、良かったです」

「いや、オレ、あんなのしか興味がなくて」

「いや、最高だった」

「どこかです?」

「箱根」

「え、『箱根八里』とか『東海道五十三次箱根宿』でも興味があるのですか?」

「はい」

「私の地元」

「はい」

「箱根です」

「え」となった。

「箱根で飲食店をしています」

「私、実は、三条さんの和歌を聴いて、良かったなぁって」

「いや」

「これから、私たち、どこか食事へ行きませんか?」…二人は、その後、ゆっくり付き合いが始まったらしい。<完>

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