妹の代わりに転生して幼女にされましたがヤンデレ化した妹が追ってきたようです

第45話 どうやったのか気になる！

「それで、ルリヤちゃんは今回どうやって突破したの？」

「えぇ……。言わなきゃダメ？」

「教えてよ。知りたいもん」

「知りたい？　でも、あんまり言いたくないなぁ」

　周りを警戒しつつも、少しばかりのリラックスタイム。

　まあ、歩きながらだけどな。

　ただ、そうは言っても、ずっと張り詰めていては、緊張に押しつぶされてしまうからな。そういうことがないようにという采配だ。

「どうして隠すの？　すごい音してたし、ばばっ、シュババッ！　って守ってくれたんじゃないの？」

「隠してるわけじゃないんだが、俺の力って、そんなかっこいいものでもないんだよなぁ」

「でも、いろんな動物さんを呼んで従えてたじゃん」

「あれはここじゃ使えないしさ」

「あ、そっか。この中にはいないもんね。入り口は閉まってるし」

「そうそう。そうなのよ」

　まあ、だからって動物を従えられたとして、ゴーレム相手に有効な攻撃を用意できたかと聞かれれば、正直微妙なところだ。

　クマの攻撃力なら、ある程度は戦えるかもしれないが、ビームに対する返しがない。

　シカの素早さなら、ゴーレムを撹乱することはできるかもしれないが、明確に攻撃力不足だ。有効打がない。

　ここのダンジョンに入れそうなの、もとい入ってきてくれそうなのだと、この辺になるのか。

　動物について詳しければ、もっと色々できたんだろうが、そうでもないのが悔やまれる。たとえ知っていたとしても、ここが異世界だということを忘れてはならない。あくまで似ているからそうだと判断しているだけで、全く別の生き物ということもあり得るのだ。

「で、どうやったの？」

「うーん……」

「どうしてそんなに渋るの？　技がどうかは知らないけど、わたしにとってはかっこいいのに」

「か、かっこいい？」

「そうだよ。小さい子に守られるのは、ちょっとむずむずするところがあるけど、守ってくれたのは素直に嬉しいよ」

「守れたかな」

「守ってくれたじゃん。ほら、わたしなんともないもん」

　ばっと体を広げるヨバナちゃんはたしかに無傷。動きからして無理をしている様子もない。

　それこそ、俺のスキルで展開した砂埃のせいで、若干汚れている感はあるが、子どもが遊んだ汚れと比べれば綺麗な方だろう。

　ある程度わかっていたことではあるが、それでも、本人から言われると格別って感じだ。にやけてしまう。

「その顔はかわいくないかな」

「ええ！？」

「でも、これからも守ってほしいのはほんと」

「いやぁ」

　照れる。照れるなぁ。

　戦い下手って気分でいたから、しっかり守れてたって言われると。

「それで、どうして目をつぶってたのかだけでも教えてよ」

「そうだねぇ。それは使ってたのが砂だからだよ。はっ」

「砂だからなんだね」

　ゆっくり隣へと視線を上げながら、少女に対して首を向けると、ニコニコとしたヨバナちゃんの顔が視界に入ってきた。

　しまった。気が緩んで話してしまった。

「でも、砂でどうやったの？」

「ここまで話したら隠してても仕方ないか」

「そうそう。話せば楽になるよ？」

「別に悪いことした訳じゃないんだけどな……。ま、いっか」

　そもそも隠すことでもない。

　話したからといって、ヨバナちゃんを戦闘の渦中に巻き込むという訳でもないし、そんな問題もない。

　気になっているのに隠している方が、よっぽど意地悪な兄貴って感じで居心地が悪い。

　ようやく話す気になった俺に、ワクワクソワソワした様子で、期待に満ちた眼差しを向けてくる彼女。

「そこまでの情報ではないよ？」

「そんなことないよ。すっごいんでしょ？」

　キラキラしている子どもの目って、こんなに胸が痛くなるのか。これが恋……？

　じゃなくて。

「えーと。どう説明しようかな」

「やっぱり嫌なの？」

「そうじゃないそうじゃない。人に説明したことないからなんて言えばいいのかわからなくて」

「ふぅん？」

「とりあえず、実際に見せた方が早いか」

　俺は近くの壁を撫でてみた。

「ん。なんか変わったか」

「そうみたいだね。多分奥の奥まで来たんじゃないかな」

「なるほど。それじゃ、えい」

「えいじゃないよ！」

　腕を掴んで止められた。

　いや、事後なので実際は止められなかったのだが、俺は壁を破壊した。

「何してるの何してるの？　わたしの遺跡に何してるの？」

「わたしの遺跡って言った？」

「言ってないよ。魔法使いの遺跡だよ。それよりなんで破壊してるの？」

「いや、これが必要なんだって」

「これ？　って何もないけど」

「いや、あるよ。たんまりと」

　木っ端微塵の粉微塵になって、それこそ粉々になってしまったから何を指してるのかわからないのか。

　壁だったもの。つまり砂だ。

　さっきの戦いでは、ガリガリとゴーレムの方が削ってくれたから、わざわざ自分で準備しなくとも、十分量の砂があったのだが、その辺を歩いているだけじゃ、わかりやすく使えるほどの量を用意できるものじゃないからな。

「ほら、いくよ。リスー」

「え！　砂のリスだ！」

「それから、シカー」

「ほんとだ！　砂のシカさんだ！　これがルリヤちゃんの力？」

「最後は、クマー」

「わー！　クマさんだ。すごいすごい！　こんなことできるなら、そりゃかっこいいに決まってるよ！」

「いやぁ」

　感激したようにパチパチ拍手までくれる。

　会場中のスタンディングオベーションかと思うほど、やけにしっかり叩いてくれる。

　そんな感じで、ヨバナちゃんのキラキラした目は、砂の像を捉えて離さない。

　どうやらご期待には応えられたようだ。

「すごいすごい！」

「スゴイスゴイ」

「そんなカタコトで言わなくても大丈夫だよ？」

「カタコト？　なんのこと？」

「ナンノコト？」

「え？」

　あれ、なんかもう一人いるんだが……。

「誰？」

「シンニュウシャダー！」

「しゃべったー！」