第7話 親友の死
平穏な日々が過ぎて行った。
しかし、僕の心は揺さぶられていた。
夕飯が出来、呼ばれるのを待ちながら書斎にいると、店の電話が鳴るのが聞こえた。そしてしばらくすると何かが割れる音がした。僕があわてて降りていくと、ユリさんは背を丸くして割れたお皿を拾っていた。覗き込むとユリさんの顔は蒼白で、指からは血が流れていた。僕はその指をとり、思わず吸った。ビクッとするユリさんで僕は我に返った。
大した傷ではなかったが、消毒をして絆創膏を貼った。処置が終わっても一言も発しないユリさんに僕は動揺を隠して、何があったのかと静かに尋ねた。すると、“妹のようにかわいがっていた親友が亡くなった”と小声で僕に告げた。そして、“明日から彼女にお別れをしに行くから数日店を休まなくてはいけない”と、申し訳なさそうな顔をした。僕はこの時ユリさんのことを抱きしめたかった。
ユリさんは3日後の夜に帰ってくると言って出掛けた。僕は3日もあの店に行けないのだ。仕方ないので前に行っていた商店に向かった。するとおばあちゃんが、“お兄ちゃんまた来てくれたんだね”とシワシワの顔で笑った。嬉しかった。ああ、僕は自分から人を避けていただけだったんだとその時思った。
ユリさんに早く会いたいと思いながら、別荘で一人弁当を食べているとき携帯が鳴った。
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