第2話 軽井沢での暮らし

 僕は初めてのスランプに陥った。

 オヤジはそんな僕に知り合いから軽井沢の別荘を借りてくれるという。その別荘はほとんど使われてなく、いつまででも使っていいのとのことだった。

 居酒屋の手伝いが出来なくなることを理由に一度は断ったが、“気分転換に行ってこい”とオヤジは背中を押してくれた。スランプ脱失に糸口が無い僕は、オヤジの気持ちを受け入れた。



 軽井沢は思ったより近かった。でも駅からこの別荘にはタクシーでないと行けない場所にあった。まだシーズン前だからか周りの別荘には誰もいない。1日かけて掃除をして僕は別荘で過ごし始めた。


 書けないとはいっても書かないわけにはいけない。雑誌の連載など、仕事は押し寄せて来る。苦しい・・・

 静かな別荘は、初めは気分転換になった。でも1週間もするとその静けさが辛くなった。パソコンと窓から見える緑だけの世界の中、僕の目は次第に緑だけを見るようになった。


 夕方になると僕は買い物に出る。座ってばかりいるとおかしくなるから自分で決めたルーティーンだ。ブラプラと別荘から10分位歩いたところに昔ながらの商店がある。来るときのタクシーの運転手に聞いておいた店だ。どうにか生活が出来る程度のモノが売っている。いつも僕はそこであまり選ぶことのできない弁当の中から一つと、次の日の昼の為のパンを買う。買いだめはしない。


 ここに来て2週間が経った。いよいよ書けない。どうしたらよいのかわからなかった。

 布団に入っても眠れない・・・それでも朝方ウトウトするのか、布団から出るのはいつも12時をゆうに過ぎていた。

 

 昨日は夕方から土砂降りだった。山の雨は都会のそれとは違った。雷も鳴って地響きもする程だった。だから外に出るなんて無理だった。

 停電にもなったので、しかたなく早くに布団に入った。スマホの充電も忘れていたので何もすることが無い。そんな状態だったので流石に少しは眠れたけど、空腹で目覚めた。今は僕の腹で雷が鳴っている。

 僕は商店の店番をしている腰の曲がったおばあちゃんが、他のお客さんに喫茶店への行き方を説明していたのを思い出した。別荘から商店に行くのとは逆方向にその喫茶店はあるのだという。僕はその喫茶店に行ってみることにした。

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