迷子
第1話
12月24日。私は、クリスマスケーキを作るためにスーパーに行った。中に入ると、入口の近くにはたくさんのクリスマスブーツが並び、有線では『クリスマスキャロルの頃には』が流れていた。製菓コーナーに行き、デコレーション用の材料を選んでいると、知らない女の子が私の服の裾を掴んでいるのに気がついた。私は膝を曲げ、女の子に目線を合わせるとこう言った。
「どうしたの? お母さんたちとはぐれちゃったの?」
私の質問に女の子は何も答えず、私の目をじっと見ていた。私が困惑していると、後ろから男の人が近づいてきた。
「良かったぁ。ここにいたの」
男の人はそう言うと、女の子の腕を掴んだ。
「いや! 離して!」と女の子は嫌がった。
「あの……大丈夫ですか?」
「すみません。この子、今2歳でイヤイヤ期に入ったばかりなんですよ」
そう言うと、男の人は女の子と手を繋ぎ、私に背を向け歩き出した。2メートルほど離れたところで、女の子が何か言いたげな顔をして振り返った。しかし、私は気にも留めなかった。
次の日の朝、テレビを見ていると、あるニュースが流れてきた。それは、スーパーのトイレに女の子が男に連れ込まれ殺されたというニュースだった。そのスーパーは、私が昨日買い物に行ったスーパーだった。すると、女の子の写真も出た。その子は、私が昨日話した女の子だった。しかし私は気にも留めず、食パンを一口齧った。
迷子 @hanashiro_himeka
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