第30話 食後
第30話 食後
二人は、料理を店員が運んできたところで話題を学園の事などの雑談に変えた。 二人が話していた内容は、他に聞かせたくない情報だからである。
料理が食べ終わり、レイナは食後酒を飲み、ウィルバードは紅茶を飲み始めた。
この食堂の店員が来ることがなくなったタイミングでレイナが口を開いた。
「ウィル。 食事の後になってしまったが、魔石を使っての魔力補充の方法を伝える」
二人で食事中にお互いに『ウィル』『レイさん』と呼ぶように親しくなったようだ。
レイナが説明してくれると言うため、ウィルバードは、内ポケットに入れていた魔石をテーブルに置いた。
「説明までに時間をとってしまってすまない。 魔力が少なくなったことによって、体調がすぐれなかっただろう。 私の配慮不足だ」
レイナは頭を下げた。
「レイさん。 頭を上げてください。僕は、魔法を使っても具合が悪くなったことがあまりないんですよ。 ただ、数年前に魔法の練習だと数十回行使したときに、意識をなくした事がありましたが、水を飲んで体が楽になったので、水には魔素を含んでいることがわかり、魔法を使うと多めに水分を取るようにしました」
「ああ、なるほど。 食前にずいぶんと水ばかりを飲むと思っていたらそういうことだったのか。 ウィルが水を飲むときにキラキラと光るからイケメンオーラかと思っていたが、魔力の補充を自ら行なっていたのだな。
できれば、その方法を私も知りたいが教えてくれるか?」
「レイさん。 それよりも、先に魔石の事を先に教えてくださいよ。 それに僕はキラキラ光ってないですよ。イケメンではないですから」
「ハハハ。 そうだな、悪い。 先ずは君の要望からだな。
今更だが、先程はありがとう。
それでは、魔石を使って魔力を補充するやり方だが―― 」
「なるほど」
ウィルバードは、魔石を使って魔力を補充して、すぐに魔石に魔力を補充して見せた。
レイナは、その動きを見て目を丸くして息を吸った。
そして、肺にたまった空気を「ふぅう」と音をだして吐いたあと、
「ウィル。君は天才なのか? 私は、魔石からの補充と魔石への補充は数年かかってやっと習得したと言うのに」
「いいえ。今まで、魔導書や教えてくれる人がいないまま、自分なりに研修したので、すでに魔素の扱い方が理解していた結果だと思いますよ」
「そうか。それだと、私は君の説明を聞いたらすぐにできるという事だな。
楽しみだよ。 君から説明を聞いて、私も水を飲むだけで、魔力回復ができるようになったら、河の近くで移動しなくてもよくなるからな」
「レイさんも、魔力の補充の為に河沿いを移動していたのですね。
僕も魔力を使い切ったら、コーロン河に飛び込んで魔力の補充を行なえばいいと思っていましたよ。
では、水を飲むことで魔力を回復させるコツですが―― …… 」
「ウィル。君は誰にも教わらずそれができていたのか。とても優秀なのだな」
レイナは、《光りよ、部屋を照らせ。ライト》と詠唱をおこなった。
部屋が、晴れの日の昼間のように明るくなった。
そして、レイナはライトの魔法をやめ、グラスを凝視して何かを口ずさんだ後、口に運んだ。
レイナの口から放たれた黄色と橙色の光りが部屋の色を変えた。そして右手の甲も光っていたことをウィルバードは見逃さなかった。
「ほお。確かにこの方法で魔力が回復するな。 ウィル教えてくれてありがとう。今後の旅が全く変わりそうだ」
「レイさんこそ天才のようですね。僕よりもキラキラ光ってイケメンでしたよ。
惚れちゃいそうです」
「私は、イケメンではないぞ。 これでも貴族令嬢だ。
でも確かに学園では、殿方よりも令嬢が私のまわりに集まっていたな」
「まさか、その集まった令嬢達はレイさんの事を『おねえさま』って呼んでいませんでしたか?」
レイナは瞳を上にしたあと数秒経ってから口を開いた。
「そうだな。そう言えば『おねえさま』って呼ばれていたな。 なぜわかった?」
「やっぱりイケメンじゃないですか」
レイナは、視線を上にして、首を右に左に振って何かを考えていた。
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