第31話 刀使い

第31話 刀使い



キーン!

ビューン ビャーン

キーン! キン


 翌朝、ウィルバードとレイナは約束通りに、互いに愛馬の手入れをした後、真剣を使用し剣をあわせていた。


「ウィル。まだ本気を出していないようだな。 もっと力を出しても私は大丈夫だ。

それとも、普段木剣ばかりを振っていて真剣の扱い方をわすれたのかな?」


「いいえ。 先輩こそ本気を出してもらってかまいませんよ。 僕の剣を受け流すだけで、攻撃を全くしていないではないですか?」

 ウィルバードは口では、このようにレイナを煽っているが、レイナの事を先輩と呼ぶほど、焦っているのがわかる。

自分のタイミングで剣を振っているのに、全てを見切られ受け流されているからだ。


「ウィルは、対戦相手が剣ではなく、刀を使う者と初めて戦うのかな?

私の動きについていけていないな」


「まるで、自分の分身と戦っている気分ですよ。剣と刀ではこんなに動きが異なるのですね」

 レイナは、呼吸を乱していないが、ウィルバードは呼吸が乱れてきている。


「ウィル。君は自分にも治癒魔法が使えるか?」


「はい。つ 使えます……」


ウィルバードが応えてた瞬間。スパッと右腕を斬られてしまった。

ブシュー

ウィルバードは自身の右腕から出血しているのもかまわず、左手一本でレイナの右半身に向けて刀を振ったが、スルリとかわされ、反対に自分の右腰をスパッと切られた。

《斬られたところ治れ》

ウィルバードは、腰を切られたところから出血が出る前に治癒魔法を行使した。

ウィルバードがピカーと光り傷が癒やされた。


二人は真ん中に移動してお互いに礼をした。

模擬戦が終わったのだ。


しばらく沈黙が続いた――


先に口を開いたのはレイナだった。

「すごく早いな、君の魔法の展開。 私はこんなに早く魔法を行使出来ることはないよ」


「いいえ。模擬戦だったのに剣よりも魔法の評価が先ですか?」

ウィルバードは、苦笑いをしたあと話しを続けた。

「すごいのは、レイさんですよ。全力を出したのに一刀も当たらなかった。 幾度も真剣勝負に身を置いていたのでしょう。 僕の動き全てが見切られていた」


「そうだな。ウィルは、実践不足だな。あながち君の婚約者や母君が言っていたことは的を外した事ではないな。

実際に今の戦いでそれが露見したからな」


「はい。全くその通りです。学園の大会で優勝したからと慢心したつもりは無かったのですが、経験の少なさは実践では命取りになることがはっきりと解りました」


「ウィルは、剣を使う者達と模擬戦などで戦ってきたと思うが、剣を使う者は盾で防御し、攻撃は力業で相手を倒す者がほとんどだが、刀を使う者は、相手の動きを見切って相手の攻撃を受け流し、相手の隙を見てそこを責める戦い方だ。

剣術大会の決勝での君の戦い方は刀遣いとして間違った作戦でない。 と言うよりも正しい戦い方だな」


「そう言って頂けると嬉しいですね。でも、剣術大会で僕の決勝戦を観ていたというのに、女性の部で参加しなかったのは何故ですか?」


「私は学園に入ってから一度も剣術大会に出たことはない。

私は、剣で戦うのではなく、刀を使って戦うので大会に出ると感覚がおかしくなって調子を崩してしまう。それが一つの理由」


「二つ目の理由は何ですか?」


「今は伯爵令嬢といえども過去の英雄の由縁がある者を完封する訳にはいかないからな」


「なるほど。でも僕も英雄達の子孫ですが、今日あっさりと負けてしまいましたが」

ウィルバードは頭を掻いた。


「私の愛馬を助けてもらった対価だからな。 それに強い者と戦うことは自分を成長させる事になる。

今日は楽しかったよ」


レイナは拳を作りウィルバードに向けた。ウィルバードも拳をつくりコツンとそれにあてた。


「先輩ありがとうございました。今日はとても勉強になりました」


「こちらこそありがとう。君はもっと強くなるよ。でも、刀の腕は、ずっと私の方が上だけどな」


二人はこの場で別れた。ウィルバードはこの後、朝食をとり、次の街へ移動を開始した。



※刀と剣との戦いの違い

男性の皆様はご存じと思いますが、所見になってしまいますが説明です。

攻撃

刀 相手を斬る戦い方

剣 斬るのではなく、叩き潰す。打撲や力による骨折等の大怪我をさせて、戦闘不能にするイメージ

守り

刀 相手の攻撃を受け流す

剣 相手の攻撃を剣や盾で防ぐ


間違っていたらごめんなさい。


それと模擬戦でウィルバードは、レイナに負けてしまいますが、ウィルバーは、めちゃくちゃ強いです。 それよりもレイナが強いのです。

作者

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