第18話 トリシャはパトリシアで、お姉ちゃま?
第18話 トリシャはパトリシアで、お姉ちゃま?
ハウスビッシュ一家は、案内されて大きな扉の前まで移動した。
「ハウスビッシュ伯爵御一行様。お待たせして申し訳ございませんでした。
謁見の準備が出来ましたので、どうぞ中へお入りください。
待合室からここまで案内してきた中年の紳士は、大きな扉を開けて、大きな部屋に案内した。
その部屋には、玉座が三つあり、一つは空席になっている。
三列並ぶ玉座のうち向かって左は空席で、右の席にはエミリーアが座っている。
真ん中の装飾が鮮やかな席からは、まわりの空気をピリッと緊張させるほどの雰囲気を持ち、背筋をピンと伸ばした威厳ある者―― アダルーシアがよく知る女性が座っていた。
アダルハードは、家族の序列がわかる配置になるようクラウディア達を促し、片膝をつけて頭を下げた。
妻のクラウディアは、娘達に膝をつけて下を向くように促し玉座に座る女性達に礼を言うために口を開いた。
「女皇陛下。お忙しいところ時間をとっていただき誠にありがとうございます。
エミリーア副女皇陛下との相談により、この席を作っていただきました」
「皆さん。頭を上げてください」
トリシャの声を聞きハウスビッシュ一家は頭をあげ、正面に鎮座する者達をみた。
中央の玉座にはトリシャが座り。右(向かって左)の席にはエミリーアが座っている。
左(向かって右)にヤネルが起立しハウスビッシュ一家の方を向いている。
右(向かって左)には、トリシャの娘、ベルティーナが笑顔を作りアダルーシアを見つめている。
「アダルハードよ。貴方が一家でここに来たという事は、何か動きがあったのだろう。それか、ウィルバードとの婚約解消の説明かな?」
トリシャは、アダルーシアを見つめ口角が上がっている。
隣にいる娘のベルティーナは母のトリシャを見つめ苦笑いをしている。
「トリシャ様―――」
「シア。私をお義母と呼ばないのは、我が愚息との婚約を解消するということなのか?」
トリシャは、アダルーシアの発言の途中で割り込んだ。
アダルーシアは、トリシャからそのような事を言われるとも思っていなかったのだろう口をアワアワしている。
「陛下。いいえ、お母様。シアお姉様を揶揄うのは、いい加減にしてください。
いつもの宮殿で話す口調だと思っていたシアお姉様は、お母様の口調に驚いて、挙動がおかしくなっているではないですか」
「ふふふ。そうね。
機密事項を含むため今日は城の謁見室を使う事になったから、私の立場を知っていないアダルーシアは、それだけでもかなりの衝撃よね」
「そうですよ。お母様。しかもここで会話するだけなのに、謁見として、わざと威厳たっぷりな態度は辞めてください。ここからは、宮殿と同じ対応にしないと、シアお姉様の本心を聞くことは出来なくなりますわ」
「それでは、わたくしパトリシア=ベルティンブルグの話からしましょうね」
トリシャ(パトリシア)の名乗りに、アダルーシアは耳を疑ったようだ。首を傾げている。
「ちょっとお待ちください。お義母様。ウィルは、家名をオッドリアと名のっています。
ただ今家名をベルティンブルグと名のりました。どういうことなのでしょう?
それに、お義母様のお名前はトリシャと記憶しています」
「あら、シアちゃん。せっかちね。これから説明するわ。
それに、わたくしをお義母様と呼ぶと言う事は、ウィルと結婚すると、気持ちが変わったのかしら?」
トリシャはここでも、アダルーシアを揶揄っているようだ。顔がニヤリとしている。
「お母様くどいわ。シアお姉様を弄るよりも、我が家の説明後に聞いた方がいいわ。気が変わるかも知れません」
「そうね。ティーナ」
トリシャは、真顔になり口を開いた。
「先ずは、オッドリア姓を説明するわね。ウィルとティーナの父であるワルフリーデンは、オッドリア辺境伯家の次男だったのよ。
でも、わたくしと結婚するには、連邦も各国の爵位も辺境伯、侯爵以上無ければ婚姻出来なかったため、先ずは、先代のオッドリア辺境伯当主が持っていた伯爵の位をワルフリーデンに継いでもらって伯爵になったのです」
「あら?お母様、お父様は伯爵からどのようにして侯爵に昇格したのかしら?」
この話は、次代の女皇のベルティーナも聞いていなかったようだ。
「ティーナ、それはね―― 」
トリシャが旦那のワルフリーデンの昇格を説明しようとしたとき、割り込んでくる声が上がった。
「お待ちください。トリシャお姉ちゃま。ここからは、私が説明した方がいいと思いますわ」
「「「え?お母様がトリシャ様のことをお姉ちゃま呼び????」
ハウスビッシュ家の三人娘は、目を見開いた。
母のクラウディアが、トリシャと姉妹である事の驚きか、お姉様と呼ぶところをお姉ちゃま呼びしたことに驚いたのか、それは三人に聞かないとわからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます