第15話 真実の愛?
第15話 真実の愛?
ヤネルは、ハウスビッシュ家の長女アダルーシアに負けずに容姿端麗で頭も切れる。出身は子爵家の長女で、行儀見習いの為、ハウスビッシュ家に仕えていることになっている。
兄妹は、上は男ばかりで自分は末の娘である。そのため、性格がはっちゃけた所があるため、それをただすため行儀見習いとして、ここで働いている。
嫁ぎ先は、ハウスビッシュ家と同じ派閥のため顔つなぎも兼ねている。
そのため、主の娘を、叩いても大きな問題にはならない? と思う。
「酷い、親父にもぶたれたことないのに」
某モビルス○ツに乗ってニュータイプになった少年のような言葉でアダルーシアは、姉のように慕うヤネルに抗議した。
「アダルーシア。エミリーア様の御前だったので、今までは注意をしてきませんでしたが、今日は許しません。
レディーがお父様を親父よびするのは、どういうことか、底に座って説明しなさい」
ヤネルは、早朝から激おこである。
そして、それを見ていた、エミリーアもアダルーシアの横で正座したのである。
この世界で、正座をして謝罪し誠意をしめす行為があったのかわからぬが、二人は正座したのである。
「エミリーア様も一緒になって正座することはありませんわ」
エミリーアは、頭を掻きながら、アダルーシアの横から離れヤネルの後ろに立って移動した。
それから、ヤネルの説教がはじまった。
そこで、エミリーアは、ヤネルの実家を思い出した。
「ヤネルのキルバサ家のご夫人は、淑女の見本としている婦人でしたね。
実は、剣が好きでやんちゃなアダルーシアの教育のために、侍女として、ほぼ一日中監視して、お淑やかに変えていこうとしているのかしら?」とブツブツと呟いて叱られるアダルーシアを見ていた。
しばらくして、ヤネルが「はぁ。はぁ」と息を切らしているところで、
「ヤネル。もう良いかしら? アダルーシアも反省しているわ。そのくらいにしてあげて」
それを聞いたヤネルは、エミリーアに深々と頭を下げて
「エミリーア様に用事があるにも関わらず、時間をとってしまい大変申し訳ございませんでした。
しかし、躾とはその場で教えなければいけないことも多いのです」
アダルーシアは、犬の躾と同じようである。
「アダルーシア様。エミリーアの時間をこれ以上奪ってしまってはいけませんわ。立ってエミリーア様にお詫びをしてください」
アダルーシアは、脚が痺れていたのだろう。プルプルと脚を小刻みに震わせながら立ち上がった。
「エミリーア様。時間が無いのに、恋バナなど――」
「うぎゃーーー!」
ヤネルは、笑いをこらえるように口を固く閉じながら、アダルーシアの足を踏んだ。
「や、やめて、ヤネル。私が悪かったわ。あしが 痺れているの。踏むの辞めて~ 」
それを見ていたエミリーアも思わず、アダルーシアの脚を扇子でパチンと叩いた。
「うぎゃー。エミリーア様までー!」
それは、辺りが完全に明るくなるまで続けられた。
二人とも鬼である。
「アダルーシア先程も話しましたが、ウィルバード様の事をどの様に考えていますか?」
「私は、昨日の打ち合わせで、彼との婚約を解消して、ヒムラー家の次男と婚約をしなければならない可能性があると説明してもらいました」
「「うんうん。それで」」
ふざけないでくださいと叱っていたヤネルまで、エミリーアと一緒に、修学旅行の学生のノリでアダルーシアの話しを聞いていた。
「私は、ウィルとの婚約を幼い頃からしていましたので、彼が好きとか嫌いとか恋愛感情は皆無だと思っていました」
「「うんうんうん。それで?」」
「父からあの話しを聞いたときに、もしこのまま会えることも出来なくなると思ったら、胸がキューンと締めつけてきたの。
私は、ウィルバードの事が好きなのだと思いました。ですから、エミリーア様とトリシャ様にウィルバードにキツいことを言うように話されたときは、彼のためになるならば。と思っていたのですが、それは、私が彼と結婚したときに、より家庭が良くなるように、そして、彼の立場が貴族の中でもより上位になるように願っていたことに気づきました」
「うんうん。真実の愛を見つけてしまったのね」
エミリーアは、顔を男性には絶対に見せられないほど、ニヤけて聞いた。
「真実の愛の意味はわかりませんが、政略結婚であっても、ウィルバードとの関係を今まで築き上げてきたのです。その時間を、彼を失うことは私には、耐えられないことです」
「真実の愛じゃないのか。つまんないわ」
と言うエミリーア。
「悩んでいた風を装っていますが、昨夜爆睡していましたわよ」
昨夜、全然悩んでいなかったとバラすヤネル。
アダルーシアは折角シリアスモードになったのに、揶揄う二人を追いかけ回って、騒いでいたが、三人ともクラウディアに雷を落とされてしまった。
エミリーアの威厳は、クラウディアの中で、地に落ちてしまったようだ。
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