第14話 翌日の早朝

第14話 翌日の早朝



「うーーん」

アダルーシアは、ベッドの上で大きく伸びをした。そして、立ち上がりカーテンを開けて窓の外をみた。

 うっすらと空が明るくなり、小鳥の等の泣き声が聞こえている。

昨夜遅くまで、話し合いをしていたが、使用人が起こしに来るよりも、かなり早くに目が覚めた。

「まだ、早いけれども、目が覚めてしまったし、素振りや走り込みでもしようかしら?」

 アダルーシアが呟いていると


トントントン

ドアがノックされた。


 「あら、ヤネル早いわね」

アダルーシアは、自分が早く起床したのを侍女が気づいて部屋に入ってくると思っていたようだ。


 そして、その予想ははずれた。いや半分外れたと言うべきか。

「朝早くからごめんね。シアが起きたようだから」

 そのように、申し訳ない顔で侍女のヤネルと入って来たのは、エミリーアだった。

 「エミリーア様? ここは、学園ではございません。侍女の振りはしなくても大丈夫でどゅ」

 日も開けきらない時間に突然来た爵位持ちの女性が来室なのだ、アダルーシアが言葉をかんでも仕方ないであろう。

 だが、早朝に突撃してきた爵位持ちの女性は、すでに外出用のドレスに着替え髪もしっかり結っている。

 「繰り返しになるが、早朝から申し訳ない。

アダルハード伯に話す前に、シアと話したいことがあるのです」


「私と話したいことですか?」

 エミリーアは、コクッと首肯した

「昨日家族と考えた予定ことで何か不具合でも? いいえ、それならば父と話せば良い事ですね。一体どういったことでしょう?」

 アダルーシアは、本当に考えてもわからないのだろう。頭を傾げて、瞳が斜め上を向いている。

 

 そんな、アダルーシアを見て、エミリーアは、口を開く。

「今日、トリシャ様とベルティーナに会って話してから、あなたは一人でハウスビッシュ領に旅立つのね?」


「はい。旅立つと言いましても、旅の準備が出来ていないため、旅支度が出来てからになります」


「それに変更はないのね?」


「はい。変更はございません」


「では、私の言うことを素直に聞いて、本心を教えてくれるかしら?」


「はい。家とは、関係なく私個人の意見を聞きたいと言う事でしょうか?」


「そう。アダルーシア=ハウスビッシュじゃなくて、一人の美少女アダルーシアとして答えて欲しいわ」


「え?美少女、わたし美少女ですか?」

アダルーシアは、急に超絶美人に自分の事を美少女と呼ばれ、うれしさなのだろう腰をクネクネさせて、顔を真っ赤にしている。


「シアが美少女なのは、学園に通っている者達も全てが知っているだろう」


「え?わたし学園でも美少女と言われているの」

アダルーシアの腰のクネクネのスピードが上がり、頬に手を持ってくるようになった。


「ただ、シアは男子をみるだけで殺せる、必殺の冷たい視線があるから男どもがシアに近づいてこないみたいだけど…… 」

エミリーアは、クネクネ腰をしている少女に聞こえないくらいの音量で呟いた。

「さて、シアが美少女なのは別として」

エミリーアの声にアダルーシアは、腰をクネクネするのをやめ、真面目な顔に戻った。


「シアは、ウィルバードと本当に死ぬまで添い遂げたいと思っているか?」


エミリーアの声にアダルーシアの顔は再び真っ赤になった。

「エミリーア様。こんなに朝早くから恋バナですか? 恋バナでしたら私の大好物なので、今夜ゆっくりとお話ししませんか?」


ゴツン!

二人の会話を黙って聞いていたアダルーシアの侍女は主の頭を叩いた。

「お嬢様、いい加減にふざけるのは、辞めてください。こんなに朝早くからエミリーア様が恋バナなどするために部屋に来ることはあり得ません!」

今度は、侍女のヤネルが顔を真っ赤にしている。

それを見ていたエミリーアは、顔を青くして「ヤネルを怒らせないようにしよう」と呟いた。

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