第9話 狸寝入り 

第9話 狸寝入り 




話しは少し、ヒムラー親子に馬車の中に変わる。


「パパ。どうして、逃げるように帰るのブヒ」

「ブフォ。すまん息子よ。先程こっちを睨んでいたメイドだが、ただのメイドじゃないと思ったブフォ」

「確かにあの睨みは、ちびるかと思ったブヒ」

「一介のメイドが、貴族であるオラ達をあんな睨むとかあり得ん。

きっと何か理由があったのだブフォ」

真面目な顔で息子のアウグスタに説明するアドムスだったが、息子のアウグスタは、父の股間が濡れていたのに気づいてしまった。

「ぼくちんを睨んだあの女も、ぼくちんの嫁にして、あんなことやこんなことをうるだブヒ」

「ブフォ。睨み付けてきたあの生意気な女は、オラの妾にするブフォ。アウグスタは、同級生の美少女を嫁にするから良いブフォ」

「わかったブヒ。パパ次に綺麗な雌がいたら、ぼくちんが欲しいブヒ」

「ブフォ。これで、ハーレムを形成できるな。あの方が来てくれてから全てが順調に回っているブフォ。子爵に叙爵されて、最後は侯爵位になるブフォ。

10年も音沙汰がないので侯爵の席も一つあいているだブフォ」


この二人は、今更だが、男爵家の当主と次男である。今日自分たちがハウスビッシュ家になぜ行っていたのか目的を忘れている。

ハウスビッシュ家の当主アダルハードは、長女のアダルーシアが了知すればと良いと話した。

アダルーシアから了承させようと無理に彼女の部屋に行ったのだが、謎に目つきの悪い侍女に睨み付けられ目的をわすれ屋敷に帰っているのだ。

きっと頭まで、オークなのだろう。三歩歩いて忘れたのだろう。

それは、鶏だが、鶏に失礼なのかも知れない。



話しは、ハウスビッシュ家に戻る。


「お嬢様。おきてください。旦那様がお呼びです。

すぐに着替えて食堂にお連れいたします。申し訳ございませんが起きてください」


アダルーシアは、うーんと言って背伸びをしたかと思ったらムクッと立ち上がった。

使用人は口を手で押さえた。それは、アダルーシアは、寝起きがすこぶる悪い。

「お嬢様、狸寝入りだったのですか!」

「だって、寝た振りでもしてクローゼットから出ないと、エミリーア様と野蛮な男との戦いが見ることが出来ないでしょう。

それにしても、一睨みとはすごいですわね。

爵位を本人が持っているとあのような睨みを覚えることが出来るのかしら?」

モニカは、はぁーっと深くため息をついた。

「お嬢様の本当のお姿は、学園にいらっしゃるときですか? ウィルバード様と一緒にいらっしゃるときですか? それとも、エミリーア様(エミリーの本当の名)と一緒のときのシリアス展開の時ですか?」

モニカは本当に呆れた顔をしている。


「うーん。本当はふざけた感じなので、今が本性かな?

学園では公女様とか、王子様がお友達なのよ。猫かぶるしかないじゃない。

ウィルは、チャラチャラしているように見えるけれど、本性は真面目だし。

お笑い担当は、私しかいないのよね」


「なんですか?お笑い担当って」


「ふふふ。我が家みたく、真面目な両親だとお屋敷の雰囲気が暗くなるのよね。

私はそんな家は望まないわ。

ウィルは、トリシャ様の本当を知らされていないようですけれど、この家は、双子の妹のアーニャかターニャのどちらかが継ぐのよね。

なんて言ってもこの大陸では、女の子の双子は女神エルーシア様と、リーサ様の再来になると家を継ぐことが、縁起が良いのよね」


「確かにそうですけれど、アーニャ様とターニャ様は、アダルーシア様とウィルバード様が婚姻されて、ウィルバード様を養子縁組して家を継いで欲しいと思っているようです」


「私、トリシャ様に見初められたので、ここの領地を治めるのはできないのよね。私も、ベルティーナ様をお助けするって決めちゃったし」


メイド長モニカとしばらく話し後、ヤネルに着替えと髪型を整えてもらっていた。

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