第3話 婚約者は続けて学園を休む

第3話 婚約者は続けて学園を休む



剣術大会があった二日後


「ハッ ハッ ハッ」

シュー シュー シュー

「駄目だ、集中出来ない…… 

シア…… 僕は何をどうすれば良い―― 」


ウィルバードは、日課の愛馬の手入れを終えた後、朝の走り込みと素振りをしたが集中出来なく、先程のつぶやきを何度も繰り返していた。

昨日、親友で王子のデットリックとその婚約者、公爵令嬢のカトリーナに揶揄われ昨日アダルーシアが学園を欠席したのは、本当に自分のせいではないかと気が気でないようだ。


 アダルーシアは、今日は、学園に来ると思い、いつもの時間に出発し、いつもと同じ道を馬車で移動した。

今日も学園までアダルーシアの乗る馬車に合うことなく学園に到着してしまった。

 いつもならば途中でアダルーシアの乗る馬車に会う。時にはどちらかの馬車に乗り換えて学園に通う事もあったのだ。


ウィルバードは、学園に着いてからも婚約者のアダルーシアを探した。

あっちこっちに行き、落ち着きがなかった。

結局今日も授業が始まっても婚約者は登校してこなかった。


「よ!ウィルどうした。なさけない顔をして」

デットリックはバーンとウィルバードの背中を叩いた。


叩かれた衝撃でウィルバードはピーンと背を伸ばし息が一瞬止まった。 

「こら、もっと力加減考えろよ。まじで息が止まったじゃん」

ウィルバードは、幼なじみの国の第一王子を睨み付けた。


「あははは。ぼう~としているから俺の動きがわからないのだよ」

デットリックは、腹を抱えて、体をヒクヒクしている。


「こらこら、デットリック様。そんな力を込めて叩いて、ウィルバード様が怪我をされたらどうしますの?」

デットリックの婚約者カトリーナが満面の笑みを作りデットリックに注意した。


「カトリーナ!注意するなら、もっと真面目に注意してくれよ。そんな笑顔で言われても俺の心は安まらないよ」


「あら?私がどんな顔をしても、ウィルバード様はその暗い顔は一日変わらないではないかしら?」

カトリーナは、ニヤニヤとして

「今日も、ウィルバードの大好きな婚約者様がいらしていませんものね?」

デットリックは、カトリーナと2人でニヤリと笑った。


「いや~。本当に2人ともそんなにからかうのが楽しいのか?」

ウィルバードは2人を交互に睨んだ。


「「うん」」


「こんなにお猿さんみたくキョロキョロしておどおどしているウィルは、初めて見ましたわ。

もうシアに骨抜きにされていますのね?

ふふふ。あなたもこのようになるのかと思ったら、揶揄いたくもなりますわ」


「いや~もう辞めてくれ。勘弁してくれ」

ウィルバードは白旗を上げた。そして言葉を続け

「カトリーナ。なぜ、シアが来てないか聞いたか?」


「あら?ウィルが知らないのに私達が知っていることはありませんわ」


「そうだな。むしろ俺たちからウィルに聞きたいくらいだからな?」


デットリックとカトリーナは、ニヤニヤして応えていたが、いきなり表情が真顔になり

「「それにしても、婚約者がウィルバードに連絡せずに、二日休んだということはどういうことなの(だろう)?」」

2人は顔を合わせた上にハモっていた。


「いやいや、2人も仲いいよな」


ウィルバードは、バーンとデットリックの肩を思いっきり叩いた。


「痛った! ウィル不敬罪で訴えるぞ」




「いやな予感しかしないんだよな。今まで俺に知らせないで休むことはなかったのに、二日とも連絡がないからな」

ウィルバードは、教室から逃亡しながら呟いた。


そして昼休みいつもは四人で囲む机には、今日は三人しかいなかった

アダルーシアが学園に来ていないためだ。


「ウィル。お昼になってもシアが来なかったな」


「そうだな。明日も学園を休むようだと、一度伯爵家(アダルーシアの王都の家)に行って見るよ。何かがあって領地に帰って居る可能性もあるからね」


「二日間休んでいると言えば、あの気持ち悪い次男も休んでいると学友が言っていたわ」


「え?リーナ。気持ち悪い次男って誰だ?」


「あら?リックはご存じないのね」


「貴族の次男は腐るほど、この学園に在籍しているからね」


「ヒムラー男爵家の次男よ」


「ああ。あのブヒッとか語尾につけるおデブか」


「あら、でも数年前までは、痩せて美少年でとても賢かったようよ。

学園で姿をみてがっかりしましたわ」


「リーナは、私とずっと一緒にいるから、どんな美男子でも、普通以下にみえるだろうな」


「あら、ディック珍しく…… 。 嫉妬かしら?」


 親友の二人はいちゃいちゃはじめたが、それを見ていたウィルバードは、

「ヒムラー。関係ないよな」

そう呟き残り昼食を食べ始めるのだった。




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