第2話 友人と友人の婚約者
第2話 友人と友人の婚約者
翌日 アダルーシアは、学園に姿がなかった。
アダルーシアが連絡無しに休むことは、ウィルバードにとって初めての出来事だった。
貴族の子供は、家の都合で学園を休むのは常日頃からある事だ。
特に、領地持ちの貴族にとっては、領主だけではなく、その配偶者と子女も領地運営に関するイベントの参加や会議などに出席するためだ。
伯爵位以上の家や裕福な貴族等は、教養は幼い頃から家庭教師が教えている。
伯爵位以上を持つ上級貴族の子女にとって、学園は教養を得るよりも、人間関係を構築する場所だ。
そして、家の派閥の人間との関係をよくして、相反する派閥の人間を観察してその者の弱点などを探っておくこともある。
「ウィル。婚約者(アダルーシア)は休みか?」
1限目の教室で一人ぼんやりとしていた、ウィルバードに同じ講義を受けるデットリックは、親友の肩を叩いた。
デットリックは、キリッとした容姿に、金髪、碧眼。王子だけあり普段の所作は洗練されている。男女関係なくとても人気がある。
「あんな奴の事は知らないよ。僕も登校して初めてわかったよ」
ウィルバードは、頭を左右に振った。
「珍しいわね。シアがウィルに何も言わない事って今まで無かったと思うわ。
私も今日休むって聞いていないし、喧嘩でもしたのかしら?」
デットリックの容姿端麗な婚約者、カトリーナは頬に手をあてている。
「剣術大会の時にシアとウィルが険悪な雰囲気になっていたな。
それが原因じゃないのか?」
ウィルバードは、親友の言葉を聞き、顔を青くした。
思い当たる節ばかりなのだろう。
「ウィルが、シアの言いつけをちゃんと聞かなかったから怒ったのね」
カトリーナは、デットリックの言葉で顔を青くした親友の婚約者に、とどめを刺した。カトリーナの顔は、悪戯が成功した少女のような笑顔だ。
ウィルバードは、今度は肩をがっくりと落としてしまった。
「ウィル。今のは、半分冗談ですが、半分は真剣に言ったのよ」
カタリーナの言葉にウィルバードは彼女を見た。
「シアのお父様は、数年前に他大陸から攻めてきた者達を剣の腕で返り討ちにしたほどの武人よ。しかも侯爵に陞爵することが内定しているわ。人を剣で斬って功績を挙げた人の娘からみると、学園内の剣術大会で優勝したといえども、昨日の剣術の大会は子供のお遊戯レベルでしかないわ」
「リーナ。君もシアと同じ事を言うんだな。僕は昨日真剣に剣を振ったよ。
結果だって優勝だ。シアは何が不満だったと言うんだよ」
ウィルバードは、少し切れ気味でカトリーナに言葉を返した。
「いいや。ウィルの剣の技は真剣に見えなかったよ。
剣に甘さがあるというか、遊びの延長みたいだった」
「リック(デットリック)もかよ。何故みんな同じ事を言うんだよ。僕は、シアに褒め称えてくれると思っていたのに、キツいことを僕に言って帰ってしまったんだ。僕の何が悪かったって言うんだ」
「ほら、やっぱりね。ウィルの事を考えてアドバイスしたのに、全然言う事を聞かないので、シアが怒ったのね。だからウィルの顔も見たくなくて、休んだのよ」
「そうだ。リーナ(カトリーナ)の言う通りだな。
ウィル。シアは親が決めた婚約者かも知れないが、ウィルは甘えすぎだと思うぜ」
ウィルバードは、二人の攻撃を受けて見事に凹んでしまった。
頬をぷくっと膨らませて机に突っ伏した。
デットリックとカトリーナは、言い過ぎたと目を互いに交差した。
「まあ、ウィルバードを揶揄うのは、このくらいにして、講義の準備をしようか」
デットリックは、ウィルバードの肩を軽く叩き、二人は並んで席に着いた。
すぐに、講師が来て、昨日の優勝者であるウィルバードを賞賛したのだが、ウィルバードは、いじけていた。
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