月。月か。

 うん。月もいいかもしれない。

 旅に出るなら、月に行ってもいい。

 まあ本当は君が一緒ならどこでもいいんだけどね。

 ふふっと笑いながらまりは思う。

「なに笑ってるんだよ」

 としんが言う。

「月もいいかなと思ってさ」まりは言う。

「人の夢を馬鹿にするなよな」

 少し怒りながらしんは言う。

「馬鹿にしてないよ」

 まりは言う。

「わたしも頑張って宇宙飛行士になるよ。そしたらさ、二人で月に行こう」

 しんの手を握ってまりは言う。

「そんなに簡単なことじゃないぜ」

 しんは言う。

「わかってるよ。月に行くことは簡単じゃない。それも二人一緒だともっと難しい」まりは言う。

「お金もかかるし時間もかかる。勉強もしなくちゃいけないし、体力もつけなくちゃいけない」しんは言う。

 しんの言葉を聞いて、なによりも二人がずっと一緒にいなくてはいけない、と、そんなことをまりは思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る