3 桜の木

 桜の木


 わたしは桜の木を見ている。

 満開の桜。

 ねえ、覚えてる?

 とわたしは心の中で言う。

 小学生のころ。

 二人で旅に出たことを。

 君は覚えているかな?


 心臓がどきどきしている。


 でも大丈夫。

 わたしは孤独じゃない。

 君がいるから。


 わたしのいる世界は真っ白で、桜の木と花びらとわたしにだけ色がついている。


 風が吹いている。


 遠くから君が歩いてわたしのところに近づいてくるのが見える。


 なにしてるだよ。そんなとこで。

 君はあのときとおんなじことを言う。


 君を待ってたんだよ。


 とわたしは心の中でそう言った。

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