幕間

真夜中の再会

「久しぶりの再会だっていうのに、冷たいねぇ」

 街灯の灯りに照らされて現れた着物の色は、深緑で上品な光沢を見せている。ざんばらに切られた白い髪は顔に影を落として目元を不気味に見せていた。

「……」

 沙穂はそんな男を前に、眉根を寄せて歯を食いしばるしかできなかった。関節が白くなるほど拳を握ろうと、その場から動く選択をできないでいる。

「さて、そろそろ向こうの用事は終わった頃だろう?今日は挨拶に来ただけだから、私はここら辺でお暇するよ。

あ、でもお誘いを受けてくれるなら別だけど」

 ケラケラと笑いながら踵を返して立ち去っていく背中と白い頭を、沙穂は睨みつけるだけだった。

「お前が、お前がこうした癖に……」

 喉から搾り出されるような声に、男は振り返ることはなかった。

「蘆屋、冬彦……」

 沙穂も踵を返し、振り返ることなく夜道を進んでいく。翻るスカートと髪が夜風に揺られ、絹糸のような光沢を見せていた。



 立ち去っていく小さな背中を暗闇から男は密かに見送る。

「さて、私の小さなお嫁さんはいつまでああしているのかな?ああ、違った。今はなんだっけ?

でも、あの男と一緒にいるのはいただけないなぁ。アイツがいなくなったらいつでも迎えに行ってあげるよ」

 くすくすと笑って見送ると、そのまま男は溶けるように姿を消した。そこに残ったのはいつまでも冷たい空気だけである。

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