第七話 怨霊
「正体は掴めたの」
時計の短針が頂上を迎えた夜、住宅街にひっそりと建つ神社に沙穂はいた。冷え込むためか、体を抱え込むようにして両腕を組んでいる。
「最初は生霊かと思ったがな。あれは怨霊だ」
音もなく歩み寄ったバメイは、煩わしそうにジャケットを脱ぎ捨て帽子を取り替える。ワイシャツの上からパーカーを被り、ジャケットを更に着込む。
「清水は一ヶ月前に死んで医者の診断も病死、今は無縁仏として埋葬されている」
「そう……」
「部屋に行ったが、呪術の痕跡は無かった。穢れは残っていたがな」
手慰みにどこからか取り出した煙草を咥え、火をつける。バメイのそんな姿に顔を顰めながらも、沙穂は風で乱れた髪を簡単に手櫛で直す。
「あの男との関係は?」
「無さそうだ。大方、潜在的に才能があったタイプなんだろう」
「皮肉なものね。死んでから才能に気付くなんて」
沙穂は懐中時計を取り出し、時間を確認した。時刻はまだ丑三つ時ではない。
「清水の最期の住居はどうだったの」
顔を顰めたままではあるものの、沙穂はバメイに向き直る。正面からまっすぐに見つめられたバメイは、軽く息を吐くように笑うと、スマートフォンを取り出して撮影した写真を見せた。
「住居に関しては土地の問題が大きそうだ。あの辺も大昔は何かしらがいたんだろう。清水の感情に寄せられ、更に本人の潜在的な才能と掛け合わさった怨霊の完成だ」
「ヤマは?」
「お前の予想通り、今夜だ」
携帯灰皿で火を揉み消し、煙草を収納したバメイは、そのまま流れるように沙穂の手を取る。
「手遅れになるよりは、早めに終わるに越したことはない」
「その采配はバメイの仕事でしょう」
ため息を
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