第3話

 「会わせない方がいい。会わせたくない」というのが、私の本音だ。でも、どう言えばいい?どうしたらいい?しばらくスマホと格闘した末、答えを出せぬまま、由美子の番号をタップした。


「もしもし? 美奈子? どうだった? やっぱり変身した? 今回は誰よ?」

由美子の元気な声が矢継ぎ早に質問してくる。


「……う……ん」

「何よ? どうしたの? 元気ないじゃん? 誰だろうと、嫌がったりしないからさ。大丈夫よ!」

「うん。それが……、雅人君……なの……」

「……へ? 雅人君って……、あの雅人?」

「うん。……ごめん」


しばらく沈黙が流れる。


「うん……、いや、美奈子が何で謝るのよ。え、まさか……歩けない感じ?」

「ううん、歩けるよ。至って健康。多分、事故に遭う前の大学生の頃の雅人君……だと思う」

「そっか。歩けるなら良かったよ……」

「うん……。で、今日なんだけどさ……、せっかくの誕生日会だけど、また別の日にしようか? うん、その方が良いと思う! お店キャンセルしとくね!」


「……ちょっとぉ! 何、気を遣ってんのよ! 何年前のことだと思ってんのよ! 私は大丈夫よ! しかも、中身は美奈子だし! うん、大丈夫! …それにさ、あの人気店、何カ月も前から、予約してくれてたんでしょ!? なかなか、予約取れないって、この間テレビにも出てたよ! もう、次は取れないかもじゃん! ずっと行きたかった店なんだからね! 予定通り、行くよ! 12:00に、現地で待ち合わせね!」


 早口でそう言うと、一方的に電話を切ってしまった。

 無理をしている気がする。でも……、由美子には由美子の考えがあるのかもしれない。


 もう一度だけ、LIMEで『本当にいいの?』と聞くと、

『もう、しつこい! 大丈夫よ! ランチ楽しみ~!』と返信があった。


 これ以上言うのも、おかしなことになると思い、予定通りに行くことにした。


 由美子の言う通り、それはとっくに「」のことなのかもしれない。もしくは、今回、気持ちにをつける「チャンス」と捉えているのかもしれない。もしくは、気持ちにがついているのか、「確かめたい」のかもしれない。


 いずれにしろ、それを望む由美子を見届けるのも、どうなるかわからない由美子を受け止め、支えるのも、親友である私しかいないと腹をくくった。



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