第5章 朝、目が覚めたら「雅人くん」になっていた

第1話

 10月第3水曜日の朝。

 朝、目が覚めると、大学生の「雅人君」になっていた…。

 まさかの家族が知らない、私の関係者の変身に動揺が隠せない私…。

『な・何て説明しよう……』


「おはようさん。今日はえらい静かやな? 大丈夫か? ……え?? 誰や、こいつ?」

「う・うん。え……っと、大学時代の知り合い……? 何で雅人君に変身したのか……、私もわからない……」

「なんや、歯切れ悪いな。まさか、元カレちゃうやろな?」

「ち、違う違う!」

「ほな、どんな関係や?」


 どんどん、夫の機嫌が悪くなるのがわかる。

「と、とにかく、ただの知り合い。変に勘繰らないでよ!」


 私も、なぜかうまく説明できず、朝食の支度に逃げてしまった。夫は機械的に朝の支度を終え、私の玄関の見送りを待たず、さっさと会社に行ってしまった。得体のしれない大学生の男のキスはさすがに嫌だったらしい。


 子どもたちの反応は慣れたもので、今回は「お母さんの大学時代の」という体で、何の疑問も抱かなかった。悠紀以外は。


 悠紀が耳元でニヤニヤしながら小声でささやく。

「もしかして、お母さんの元カレ?」

「違うってば。お父さんも何か誤解してたけど、ホントに何もないの。ただの知り合い」

「ふ~~~ん」

まだ、信じていないようでニヤニヤしている。


 3人の子どもを送り出し、朝の家事も終えた。

 今日は、由美子の45歳の誕生日。一緒にランチをして、ささやかな誕生祝いをすることになっている。ちょうど第3水曜日で、『何に変身するかわからないよ?』という私に『おもしろいじゃんっ!…てか、中身は美奈子だし、関係ないよ!』と笑っていた。だがしかし、今回ばかりは……。

「どうしたものか……」

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