第2話
何とか最低限の朝の支度は終わり、時刻は7:00。
夫はこれまでで一番、行ってらっしゃいのキスに戸惑いを見せ、智也は私が転んで骨折しないように気遣い、悠紀は
「たっくん、私が起こして、事情を話してこようか?」
と気遣った。私は、迷ったが、
「もう、4回目の変身だから、たっくんもわかると思うし、二人でゆっくり話すね」
と、いつも通り3人を先に送り出した。
ゆっくりと階段をのぼり、たっくんのベッドに腰掛ける。
「たっくん、朝だよ。おはよう」
たっくんが目を覚まし、私の姿を見ると
「ばぁば! ばぁば! 会いたかった! 会いたかったよ!」
と抱きついてきた。
「うん…‥、あのね……たっくん。私は……」
「ばぁば、今日のために来てくれたんだね! 嬉しい!」
そう言うと、学習机の上に置いてあった1枚のお便りを、私に見せた。
『三世代交流。地域の方と一緒に楽しく学ぼう』
日時は本日11:00~12:20。地域の高齢者や生徒の祖父母を招待して、一緒に工作をしたり、歌を披露したりする、敬老の日にちなんだ学校行事だった。
「あの……、たっくん、あのね……」
「嬉しいな! ばぁば、もちろん来てくれるよね! 僕ね、手紙も書いたよ。歌もね、大きな声でいいね! って、先生に褒められたんだよ!」
おかしい。たっくんは、こんなに早口で、人の言葉を遮って話したりしないのに。そして、私の顔を懇願するするような顔で見つめている。『あぁ、そうか……』私は悟り、母に、なりきる。
「うん。もちろん、行くよ。たっくんのかっこいい姿、見に行くよ。」
それから、たっくんは安堵の表情を浮かべ、いつも通り、いや、いつも以上に朝の支度を張り切って済ませ、二人で朝食を済ませると、母の体を気遣って、洗濯や食器洗いなどを積極的に手伝い、元気に登校していった。
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