第14話 綾香 復讐準備
(注)ちょっと過激なシーンがあるので(痛くはない…です)、薄目で読んでいただければ。
*
自分も狡賢い人間だったんだ、そう思った。
自分の幸せは壊したくないけれど、あの女の幸せを壊したい。
でも、人を●すのは嫌だ。だけど、あの女に絶望を与えたい。
暴力は嫌。
だから、身体的に傷つけることはしない。
なら精神的に追い詰めて、あの女の幸せを壊すには―――
高校時代の友人に連絡をとり、あの女、
標的を移すことも考え、私たちのグループも連携をしっかりと取り、対抗はしていた。最後まで、私一人だけに嫌がらせをし続けてきたことは、良否の判定が難しいけれど。
櫻井は高校卒業後、短大、就職、そして今度結婚することが決まったらしい。
相手は、私をいじめていた桜井のグループの中の一人だった。あぁ…、こいつもしっかりと覚えている
人目の少ないところでは、ゲラゲラ品のない笑い方をするやつ。渡り廊下にある2~3段の低い階段で、後ろから蹴り落とされた恐怖を、今でも覚えている。眼鏡にヒビが入って…、母が買ってくれた、お気にいりの眼鏡だったのに。
親のコネで入った会社に、今では礼儀正しい好青年か。
この二人に愛情が育まれていたかは怪しいところだが、結婚を決めたのならお互いを好ましいと思ったのだろう。お祝いして、あげないとね。
友人からの情報だと大雑把にこれくらい、もう少し正確なものが欲しくて探偵事務所の素行調査・身辺調査を依頼した。安い値段ではなかったが、高すぎるものでもなく、欲しいものを手に入れてくれた。
ありがとう、変わっていないでくれて。
ありがとう、昔のままの
男の方は、学生時代から相当女遊びでならしたらしく、とっかえひっかえだったそうだ。こんな人間のどこに惹かれたのか、あの女は。いいところは親の会社が大きく、ありていに言えば金持ちということ。類は友を呼ぶのか、櫻井もそこそこ富裕層の人間だ。引き付け合う何かがあったのか…正直どうでもいい。
櫻井の方は、調査結果と写真があれば十分。
標的は男の方。綿密な作戦と言うほどではないが、やることは決まった。
出来ればもっと、確実なものが欲しい。
…自分でなんとかするしかないか。
最低限の助けを借りて、体を張る実行役は自分一人。
どうしても必要な力を、あかりに頼み込んだ。
「本気!? 綾香。そんなことをしてなんになるのよ!」
「ごめん。あかりを巻き込みたいわけじゃなかったのに」
大きく首を振って、あかりは私に詰め寄る。
「違うわ、そうじゃない! 響一と結婚するんでしょ。そんな、復讐なんかに…」
「意味、ないよね。本当に無意味でしかない。でも、許せないの…。あの女が言った言葉が、されてきたことが、忘れようとしても頭から消えてくれない」
あの女と会ってから、ずっと消えない。
日増しにこの感情が、激しくなっていく。
怒りで身が震えるなんて、ありえないと思っていたのに。
「身体を許したりなんかしたら、心は許してないなんて言い訳、通じるわけないでしょ! 浮気じゃないの…」
「浮気じゃない!」
浮気という言葉に頭がカッとなり! 叫んで、あかりを睨みつける。
浮気なんかじゃない! 響一より愛する人なんて、この世界にいない!
あかりは、私とは対照的に、静かな目で視線を交わしてくる。
「響一とも、相談しなさい」
「言えない…、私怨だから。響一は巻き込みたくないの。あかりを頼っておいて、ごめん」
「私が手伝わないって言ったら、やめてくれる」
静かに首を振る。
「響一に話すって言っても」
「…うん」
あかりは目をつむり、長い、とても長い溜息をついた後、犯罪をするわけじゃないのよね、と念を押して聞いてきた。たぶん犯罪にはならないと思う…あやしいけど。
もし犯罪だとしても、最悪捕まるのは私一人だけ。そう立ち回る。
「わかった…、力を貸してあげる。その代わり、やるからには完璧にやるわよ。手伝えることは全部手伝うから、私達以外には秘密にすること。菫にもよ」
「ごめん、あかり」
「高校の時に私達が綾香と出会ってれば、そんなやつらなんか、けちょんけちょんにしてたのに」
「なによそれ…もう」
ふたりして涙ぐみながら、笑ってしまった。
あかりの、メイクアップアーティストとしての技量は、凄いの一言だった。
自分でもナチュラルなお化粧はしても、身だしなみ・マナーとしてのもの。
メイクと呼ばれるような美しさを引き出すものは、芸能人などがやるものだと偏見を持っていたものだ。
男が好むのは、一夜限りの相手。
ケバケバし過ぎるのは避け、品がありそうなのを物色する…か。
あかりにお願いしておきながら、自分は整形でもしたのかと鏡を見て驚いた。
粘着(貼り付け)式のウィッグを付けて…自分で自分だと認識できないくらい別人になった。これならいける。
結婚する男が、マッチングアプリで女漁り。いかれてるのか独身最後だからと、はめを外しているのか。私にとっては、好都合なので構わないけれど。
一夜限りで会いたい、体目的の遊び相手や、その日限りの割り切った関係を築ける大人の相手募集中、会う場所も遠すぎず近すぎず。
…よし。手で顔を隠した、自撮り写真に喰いついてくれた。
ブランド物のバックを持ち、普段の自分なら絶対に着ない黒のワンピース。
胸元を、少しだけ強調するような下着を身につけたが…膝上何センチこれ。座って足を組んだら、正面から下着が丸見えになっちゃう。
恥ずかしい気持ちを全力で押さえこみ、標的の前に立つこととなった。
あかりには私と男が会って、ホテルに入るところまでを遠くから撮影してもらい、入ったあとは先に帰ってもらう。凄く心配されたが、こんなくだらないことに、少しでもあかりを、遠ざけたいと思ったから。…助けてもらってるのにね。
予定通りの待ち合わせ場所で、男と会うことができた。
私を後ろから蹴った時の、ニヤケ顔は鳴りを潜め、紳士そうには見える。
私は仕事上身体を動かすことも多いため、スタイルには自信がある。
体形が露骨に出るワンピに、男の視線が上から下へと移動し、また胸に戻った。見覚えのあるニヤケ
高校の頃は、眼鏡をしていたが、今はしていない。どうせ私の顔すら、覚えていないだろう。それでも、少し緊張する。
男はヒューッと口笛を吹いて驚き、今夜はついてると、
簡単な会話の後、『食事はいらない。すぐに欲しいかな』ってねだるように私が言うと、その下卑た表情を深める。そして肩に軽く手を回され、歓楽街のラブホテルへと直行した。
手慣れてるのか、このホテルを利用しなれてるのか。
お気に入りっぽい部屋の番号を押し、フロントの自動精算機で先払いしたあと、スムーズに部屋に到着。
がっついてくるかと思えば、シャワーは? と。
先にどうぞと勧めたら、鼻歌まじりで浴室に入っていった。
最悪こいつと、することになるかもしれない嫌悪を必死に抑えていたが、これも幸運と呼ぶべきか。なにか飲み物を用意しとく? と呼びかけると、お酒じゃ楽しめないからミネラルウォーターを、と返事が戻ってきた。
ここでも、あかりに助力を頼んでしまったが。(剛君、ごめんなさい)
分かりにくい、ベット全体が見える場所に小型の隠しカメラを設置する。
ワンピースを脱いで下着姿になり、口の中に無糖のチョコを含み、溶かして舌の上で転がしておく。
ガチャっと音を立てて、浴室から下半身にタオルを巻いて出てきた男は、下着姿の私を見てまた口笛を吹く。ゆっくりと男に近づき、強引にキスをしながら舌で口をこじ開け、相手の舌にチョコを塗り込む。
ビックリしたのか顔を離して私を見る男に、『ただのチョコよ。媚薬効果があるから刺激になるでしょ』と微笑んで、薬入りのミネラルウォーターを渡した。
しっかり水分を取って、これからたっぷり汗をかくのに脱水症状なんて白けさせないでよねと、甘ったるく言うとごくごくと飲み干してくれる。
男の頬を擦りながら、いい子ね…少しだけ待っててと浴室に向かった。
気持ち悪い…。何度も口をゆすぐ。
まだ終わりじゃない、気持ちを緩めるな。
薬の効果が出るギリギリまで、時間を稼ぎたいけど…訝しんで浴室に来られても困る。
気力を萎えさせるな、最悪も覚悟してたでしょ…。
どうか男が眠っていますように。そう願いながら、裸の上にバスタオルを巻いた状態で部屋に戻るけれど、都合よく物事は進まないか。
男はベットの上で準備万端と、見るからにどす黒く
何が自慢になるのか…。『ペニスサックじゃ、感触がいまひとつらしくてね。シリコンボールが良い具合にはまって、忘れられなくなるみたいだ』『人生観が変わってしまうけれど、すまないね』…など、どれだけ女を漁って食い散らかしてきたのか。
この
響一ので見慣れていたから、そんなに怖くないと思っていたのに。
『さぁ、君が元気にしてくれないと、楽しませてあげられないよ』
そのセリフを聞いた時は嘘だと思った。まだ大きくなるの。
………覚悟を決める。
自分の表情が引き攣っていなかったか心配だったけど、緊張してるとでも思ったのだろう、男は口角を上げながら私を見ていた。
でかい。手で握ると余計にその大きさが異常に思え、さらに小粒の真珠でも入れたかのような丸い突起がいくつもあって。それに何かの香水を振りかけたのか、私には合わない吐いてしまいそうな香りがする。
嫌悪感と嘔吐感を必死に抑え込み、それをゆっくりと舐める。竿を丁寧に、下から上へ、上から下へ、数回往復したら頂上の亀頭に口をつける。先を口にくわえ舌でチロチロ舐めながら、玉を揉みほぐす。
黒光りしている。私の涎と男の汚い液体が交じり合って…気持ち悪い。
気持ちが良いのか、私の髪を撫でて先を促す。
一度でも出してしまえば…。
本格的に頬張るように咥え込み、上下に頭を動かす。
早く終わらせるために、終わって…。
男は私の頭を両手で掴み乱暴に…まるでオナホを扱うように。
息ができなくて苦しくなり、酸欠になると思った瞬間、口の中のそれが膨らんで…吐き出された。
最後の最後まで吐き出し終えるまで、男は私の頭を掴んで離さない。
ようやく満足したのか私の頭を離して、髪を撫でてくる。
私はむせてせき込み、その大量に吐き出されたモノを口からこぼすように、手のひらに吐き出す。
これで少しは時間が稼げると、少し涙目になりながら考えていると、先ほどよりも一回り大きくなったのでは、と思える威圧感を放った異形の塊を、私の眼前に突き出してきた。
『ありがとう。これで君に、最高の夜をプレゼントできる』
私はあまりの嫌悪感と嘔吐感を抑えきれず、震えながら…漏らしてしまった。男は更に興奮したのか、私を組み敷いてバスタオルを剥ぎ取る。濡れていないことなどお構いなしに、『痛みが快感に変わっていく、女の顔を見るのが好きなんだ』と興奮を露わにしてくる。
人を見る目じゃない…。おもちゃ感覚で、女を見てる。
嫌だ! 嫌だ! 先ほどの覚悟はなんだったのか。
響一以外の男と、こんな奴なんかと、絶対にしたくない!
私は怯えながらも、力いっぱい男の拘束から逃げ出そうとするが、力が強すぎて跳ねのけられない。必死に暴れるのが、楽しくてしょうがないのだろう。
『君は良い! 今まで出会った中で最高の女性だ! 』
そう言って私の秘所に、異形な塊を何度も擦りつけ、挿入しようとする。
私は目をギュッと閉じる。助けて…響一、 ゴメン…響一!
「いやーーーっ!!!!!」
………怖れていた瞬間は、こなかった。
お腹のあたりに重みを感じ、うっすらと目を開けてみると、男は私に倒れ込むように眠ってしまった。
ほっとしたのも束の間、込み上げる吐き気を我慢しきれず浴室に飛び込み、胃の中がカラになるまで吐き続けた。
怖かった…本当に怖くて、震えが止まらない。
でも、ここまで来て計画を台無しにする訳にはいかない。
裸のままベットに戻り、男を仰向けにして私が挿入しようとしているように、腰を前後、上下に動かして達したかのように、私の向きを変えて同じような動作を…。
ひと通り終えたあと、今度は自分のスマフォで、こいつとやってるように見える自撮りを撮影する。手が震えながらの撮影だったけれど、確認して見たが大丈夫だろう。
服を着直し、隠しカメラも回収、すぐにでも部屋を出たかったが、美人局や何かの犯罪だと思われても困ると思い、ベットの横のメモ用紙に書置きをした。
それと男の頬に、口紅でハートマークを書いて…証拠になるようなものは無いわよね。
何度も確認をして、私はラブホテルから出て行った。
感情に、支配されない人間はいない
そして、一度でも支配されてしまえば
愚行と理解していても
止めることはできない
絶対に
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