第32話 公爵令嬢は慰謝料を請求すると誓う②
他の三人がディアナに対して心の中で萌えまくる中、ニヤニヤしていたエマが一番最初に素の顔に戻りました。
「そう言えば。あの時パーティ会場で殿下とヘリオス様が話していた内容ですけど、
ディアナも硬い表情になり、外面に戻って答えます。
「ええ。この婚約を殿下の方から破棄するような事があれば、外様や反王家の勢力はワタクシを……"辱しめられた西の国の姫"を旗印にして王家を攻撃するのに最適だと考えるでしょう? あわよくばカンサイ国を再興してバクフ王国から独立し、どさくさに紛れて自分達もそこに混ざる事まで狙っていたかもしれないわ」
自分の事を"西の国の姫"と言う所で耐えられず、少しだけ恥じらうディアナ。これは古い言い回しですが、彼女が元カンサイ王家の血を引いている事からたまに言われる事です。
「……罠を仕掛けたのは殿下だけではなく、この機会にワタクシに接触しようとした外様や反王家の貴族まで丸ごと釣り上げて叩くつもりだったのよ。……そしてお兄様自身は賭けがどっちに転んでも王家に絶対の忠誠を誓う、と契約書で約束して自らの首を守ったわけなの」
この後、外面で無表情の筈のディアナが若干呆れたような雰囲気を匂わせます。
「だけど陛下に賭けをもちかけるなんて信じられないわ! 確かに陛下側が有利な条件で申し入れしてはいるけれど」
「有利とは?」
「もしも殿下がハニトラ男爵令嬢に本気になって婚約破棄をしたとして、王家としては政略結婚でワタクシを縛り付けて反感を買うよりも、ワタクシを諦める代わりに公爵家の絶対の忠誠と反王家の正体を抑える機会を得られれば悪い取引ではないでしょう? しかも『婚約破棄騒動は、最初から王家と公爵家が手を組み、敵を炙り出す罠でした』と宣言して反王家の勢力を処分すれば、殿下が色仕掛けに落ちた事も誤魔化せるもの」
「「「「……」」」」
ヘリオスの狡猾さにドン引きする品行方正な令嬢達。
「でも多分、陛下は賭けに勝つ自信もお有りでいらしたからお兄様の申し入れを受けたのでしょうね。実際、勝って一番良い結果を手に入れたのですもの」
「……ヘリオス様、あの美しいお顔でそんな恐ろしい事を考えていたなんて」
「元々腹黒いわよお兄様は。あのパーティで王家と
「「「「え?!」」」」
「殿下が婚約者以外の女性をエスコートして現れたから私にダンスを申し込もうとしていた何人かの貴族令息。重複する者もいるけど殿下が『一旦婚約を白紙に』と言った時におかしな動きをした者。それと……」
「「「「それと?」」」」
「……」
「御姉様?」
今から言う内容の恥ずかしさに外面が剥がれ、赤くなり黙り込むディアナ。それを見たドロランダが後を受けます。
「お嬢様のファンクラブに後から入会を希望した中にも疑わしき人物が」
「「「「『赤薔薇姫の会』に!?」」」」
「希望者のリストを握っているのはカレンですから。今ヘリオス様とリストの人物を洗っている所なのです」
「ああ、カレン様が駆け回っていらっしゃる後処理って、そういう意味ですのね……」
呆然とする『赤薔薇姫の会』の面々ですが、その中でアリスがはっと気づいて疑問を口にします。
「……あのう、カレン様がヘリオス様に『ざまぁ』って仰ってるのは何故ですの?」
「んもう! アリス様ったら! この事はカレン様絡みで始まった……ってさっき御姉様が仰ったでしょう? それでわからない?」
ミレーユがアリスに言うと、アリスは首を傾げます。
「ヘリオス様の見立ては外れて、殿下と御姉様が皆様の前で両想いだと表明されたから、ヘリオス様は婚約者を決めないといけなくて『ざまぁ』なんですよね? カレン様が絡んでいると言うのは……あら? もしかして?……ひえええっ」
興奮して赤くなるアリス。ミレーユは満足げに言います。
「やっとわかったのね! ディアナ御姉様が王家に嫁げばカレン様も当然、御姉様専属の侍女としてついていくから、それを阻止したかったのよ!」
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