第20話 パーティには陰謀が渦巻く・後編
セオドアとカレン、二人は一見して共通点が無いようですが瞳がとても似ているのです。その色もそうですが、ニィッと笑うと三日月のように細くなる様がそっくりです。
(あの時の笑み、カレンがイタズラや企みごとを考えている時の瞳と同じだったわ……でもセオドア様もシノビなら、カレンの遠縁の可能性すらあるから不思議ではないわね)
ディアナが不安を自己解決できた事に満足し、改めてホールを眺めると右手のそう遠くない所に目立つ団体が見えました。
(……流石に殿下は踊らないようね)
王子は左横にフェリアを侍らせたまま、高位貴族や学園の関係者と軽く挨拶をしているようですがヘリオスやディアナ以上に沢山の人に囲まれています。フェリアの今日のドレスはピンク色を基調としながら、裾の方に向かってグラデーションで緑色が入るデザインです。まるで可憐なピンクの花の蕾のように見えます。
緑といえば……
「殿下の瞳の色をドレスに取り入れるなんて、あの女は本当に図々しい!……ねえ、ディアナ様もそうお思いですよね?」
二人を見つめていたディアナは、突如横からキンキン声でそう言われてピクリとしました。横にはいつの間にか例の自称"取り巻き"の令嬢達が、シャロン達を押し退けて寄ってきています。
(またそんな事を……この方々の頭の中はどうなっているのか理解できないわ)
ディアナは呆れ、"取り巻き"達へ遠慮なく蔑んだ目を向け小さく呟きます。
「この間も言ったでしょう。貴女達の品位を疑うわ。もう話しかけないでくださる?」
「「「「!!」」」」
ディアナは前回の反省を踏まえ、自分が悪目立ちしない為と"取り巻き"達を過剰に辱める事のないよう、他の人達には聞こえないぐらいの小声で話しました。
が、自らのキンキン声で周囲の耳目を集めておきながらディアナの言葉に剣呑な顔つきに変わった彼女達を見れば、ディアナの返答は良いものではないとわかってしまうでしょう。
「ディア? 大丈夫か?」
ディアナの周りの空気を感じとったヘリオスが近づいてきたのを見て、"取り巻き"達は波が引くように逃げていきます。ほっと一息ついてから、押し退けられたシャロン達を心配して声をかけるディアナ。
「皆様、お怪我はございませんか?」
「御姉様!」
「大丈夫です。御姉様に心配をおかけしてしまい申し訳ありません」
「あの人達失礼ですよね! 無理やり入ってきて、御姉様が傷つくような事をわざと言ったりして!」
「悔しいわ。私達がもっと強ければ割り込まれなかったのに。次はちゃんとこの場所を守れるよう身体を鍛えますわ!」
何故か「身体を鍛える」という少しピントのズレた事を言うエマに、思わずクスリとディアナが小さく微笑むとヘリオスと四人の令嬢は目を丸くしました。一瞬の後、ヘリオスは苦笑してこう切り出します。
「……いや、身体の強さもそうだけど、あのご令嬢達の鼻息の強さは凄かったからな。君達には少し荷が重かったね。でも妹がこうして笑顔になれたのは君達のお陰だよ」
苦笑から満点の愛想笑いに切り替えたヘリオスに四人は真っ赤になり、中でもアリスは「ひえええっ」と言って倒れそうになっています。ディアナが兄の女たらしぶりに内心呆れていると、その兄は笑顔のままこう言いました。
「ディア、君はさっきの五月蝿いご令嬢達には今まで興味も抱かなかったのかもしれないが、あれは多分
「ええ、恐らくそうだとは予想していましたわ。今までも酷くワタクシに付きまとって、何とか取り入ろうとしていましたもの」
「困ったものだな……それに比べて、こちらのお嬢様方はなかなか可愛らしい」
またもやヘリオスの笑みにシャロン達と、それだけではなく周りで見ていた女性達もぽ~っとなりかけています。反してディアナは真顔です。これでは今後益々ヘリオスに夢中になる女性が増えそうなのに、それを袖にして「妹より素晴らしい女性などいない!」と発言されでもすれば……と考えると頭が痛くなりそうでした。
(ああ、カレンが側に居ないのは失敗だったかもしれないわね)
そんな中、新たな騒ぎが起きたのです。
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