びっくりドンキ一

 女子高生に大人気のハンバーガーショップの吉野。実はこの吉野家には姉妹店が存在する。

 店の名前は「びっくりドンキ一」。正式には「びっくりドン・キいち」という。そして吉野家はハンバーガー屋であったが、びっくりドンキ一は名前の通り回転寿司屋である。因みに回転寿司ではなくカウンタータイプの店もあり、その場合名前は「冷静なドン・キ一」という。


 ライバル店は「いきなりステイッキ」で、この店は回転寿司が回っている中にいきなりステーキを流すという荒技を使う事で人気を獲得した回転寿司屋である。そしてこちらもカウンタータイプの店があり、その場合の名前は「今更ステ一キ」といい、散々寿司を食わせておいて、食後にスイーツまで出しておいて、お会計の時にようやく「ステーキの焼き加減は如何なさいますか?」と訊いてくる事で有名になった店である。


 こんな強力なライバル店に対抗すべく、びっくりドンキ一が開発したのが「びっくりドン」というガチャシステムである。回転寿司屋でガチャシステムと言われてもピンとこない人間が多いと思われるが、これがどういうシステムか説明すると――各テーブルに備え付けてある「皿回収ポケット」に、食べ終わった皿を5枚入れるとタッチパネルにパチンコのような演出がスタートし、見事「当たり」を引く事が出来れば特別な賞品としていきなりステーキが出てくるという斬新なシステムであった。


 このシステムによりびっくりドンキ一は老若男女から絶大な人気を獲得し、今では回転寿司屋のステーキシェアNo.1となっているが、肝心の寿司のシェアはステーキ屋である素四郎に負けていた。

 因みにステーキ屋に寿司のシェアで負けている理由は、店の人気メニューのベスト3が――


1位 からあげ

2位 レモンを搾っていないからあげ

3位 レモン


 っとなっているからで、勘の良い人ならばお気付きだとは思うが4位はレモンを搾っていないレモンである。


 とはいえ――。姉妹店である吉野家が女子高生に絶大な人気を誇るのに対し、このびっくりドンキ一はOLに絶大な人気を誇り、ランチの時間ともなると店がOLでごった返す事からオフィスとも呼ばれ、そしてディナーの時間はディナーの時間で仕事終わりのOLで溢れ返る事からフィットネスクラブ……居れば居るほど太るフィットネスクラブと呼ばれていた。


 それが――そんな店がびっくりドンキ一であった。

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