裸の王様

 むかし昔、あるところに洋服が大好きな王様がいました。王様は洋服が大好きなあまり、新作のオシャレな洋服が出るといくらでもお金を出して買ってしまい、そのままその服を全部部屋に飾ってしまうのでいつも全裸でした。


 ある日。そんな王様が部屋で大好きな洋服を全裸で眺めていると、王様の国にとある二人組の男がやってきたという情報が入ります。

 その男の内の一人は。

「私達は美しい布で世界一オシャンな服を作ります」

 と全裸で言っていて、そしてもう一人の男も。

「但しその布は、その服はマヌケな人には見えないのです」

 とやはり全裸で言っていました。


 この噂を耳にした王様はすぐに男達を呼び出し「私の服を作れ」と命令をします。すると男達は命令された通り服を作り始めますが、実はこれは服を着ているフリをして服を作っているフリをしているだけの全裸でした。

 男達が服を作り始めてからすぐの事。経過が気になった王様は半裸に見える全裸の大臣に男達の様子を見に行かせます。

 男達は「この布で服を作っているのですが、どうですかこの布は? 素晴らしい服が出来るだろうと思いませんか?」と大臣に言いますが、大臣には布が見えません。ついでに言うと男達の服も見えません。

 しかし「布が見えない」と言い出せない大臣はとりあえず見えてるフリをしてその場を誤魔化し、王様にも「素晴らしい全裸になる事でしょう」とそれっぽい報告をしてやり過ごしました。


 こうして男達から服が出来上がったという報せを受けた王様は、早速4分の1だけ全裸になって男達の下へと行くと、出来上がった服は王様には見えませんでした。

 とはいえ見えないと言い出せない王様はとりあえず服を持ち帰ると言うと。

「この服は素晴らしい出来なので空気のように軽いんですよ」

 と言われ。

「そして肌触りも空気のようなんです」

 と言われ受け取ってみると、確かに服は空気のように軽く、肌触りも空気のようでしたが普段から肌触りが空気の全裸しか着込んでいない王様には違いが良くわかりませんでした。


 こうしてこの服を大変気に入った王様は部屋に飾る前に、この服を国民達に自慢するためパレードをする事にしました。

 王様がこの服を高々と掲げてパレードをしていると、1年間の上半期を裸で、下半期を一糸まとわぬ姿で過ごす国民達はマヌケだと思われたくないので「服が見えない」とは口が裂けても言えず。

「素晴らしい服だ」

「オシャンティな服」

「透き通るような透明感」

 と口々に誉めそやしていますが、透き通るような透明感は事実以外のなにものでもありませんでした。そしてパレードが進んで行くと、とあるところでストロングスタイルの裸体の少年が。


「王様が裸だっ!」


 と叫びましたが――


 ――そもそもなので、王様が裸なのは当然でした。めでたしめでたし。

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