北風と太陽
ある時。北風が力自慢をしていたので、それならばと太陽が力比べをしようと提案し、二人は勝負をする事になりました。
そこで二人はどちらがより重いプリンを持ち上げられるかの勝負ではなく、通りすがりの旅人の服を脱がす事が出来るかという勝負をする事にします。
なので二人は旅人が前を通過するのを待っていると――
「……」
「……」
来たのは服を着ていない旅人でした。流石に全裸の旅人の服を脱がすのは北風と太陽でも不可能だったので二人は次の旅人を待ちました。しかし次に来た旅人も靴下しか履いていなかったので二人はスルーする事にします。
そして三人目。ようやくふんどしにロングコートだけというまともな旅人がやってきました。なので二人はとりあえずアレで良いからロングコートを脱がせた方が勝ちという事で勝負が始まりました。
まずは「セクシー女優より刺激が強い53歳サラリーマン男性」の異名を持つ北風がチャレンジします。北風は力いっぱい吹いて旅人のロングコートを吹き飛ばそうとしますが、鉄壁のふんどしを装備していた旅人のロングコートは1ミリも動きませんでした。
なので次は「53歳サラリーマン男性より刺激が強い54歳サラリーマン男性」の異名を持つ太陽がチャレンジします。太陽はただただどっしりと構え旅人を燦々と照らします。すると暑くなってきたのかロングコートを脱ぎだす北風。
「お前が脱ぐんかいっ! てゆーかロングコート着てたんかいっ!」
とツッコミを入れる太陽でしたが、実際に旅人も暑くなったのかロングコートもふんどしも脱ぎ全裸になりました。
『お前だったのかっ!』
――そう。北風と太陽は旅人が全裸になったところでようやく気が付きました。この旅人が実は一番最初に前を通った全裸の旅人だった事に……。
と、こうして旅人の脱がさなくても良いふんどしまで脱がしてしまった太陽でしたが、とりあえずコートを脱がせた事は紛れもない事実なので、この勝負は太陽の勝ちという事になり、この話は――
――物事は厳しくあたるより、寛容的にあたった方が良い結果になる。
……という教訓話のように錯覚しますが、実際にはこの勝負の真の勝者は旅人だったと言っても過言ではないので、小説を書く時は確り伏線を張るのが大事……という教訓話でした。めでたしめでたし。
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