ロボットアニメ

「あ、因みにシンジ君と唯一互角に渡り合える相棒のムロ・アレイ君のリングネームは鉄・アレイって言います」

 と言い出したのは三世だった。

「あ~やっぱムロの方もそんな感じなのね……」

 と香織が半ば呆れていると。

「で、そんな二人が乗っているマシン。シンジ君が乗っているのが『クリスタルガイザー』で、アレイ君が乗っているのが『グライシンガー』といって、このロボ同士が合体するとガングリオンになります」

「いやあのさ……さっきからおかしくない? クリスタルガイザーってミネラルウォーターの名前だしグライシンガーってプロ野球選手の名前でしょ?」

 するとこれを否定するかリーダー。

「いや、グライシンガーはプロ野球選手だ」

「どっちだっていいでしょそんなところっ!! ツッコミどころはそこじゃないからっ!」

 とまあ香織の言う事にも一理あるが、宥めるかのように童子が続ける。

「まあまあ落ち着いて香織女史。ガングリオンはロボットアニメというだけあって他にもロボットは出てくるし……てゆーか実は1番人気のロボは惑星ドゥルワカシーの下駄職人でラスボスの『シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ』が乗ってるマシンなんだよね」

「下駄職人シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテッ!」

 と目を丸くする香織だが間髪を入れずに。

「いやシュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテってドイツのケーキの名前じゃん! てゆーか惑星ドゥルワカシーの下駄職人と地球のプロレスラーがロボットに乗って戦うアニメって異色過ぎない?」

 香織のいう事は尤もだが、このアニメは今世紀最大の問題作である。なのでまだまだを発表したくてしょうがない童子は鼻息を荒くし。

「でもでも、ドゥルワカシーは栃木県にしかない超高エネルギー物質の『アストラゼネカ』を略奪して、自分達の星の『綺麗な水のそばにしか生息できない演歌歌手』の絶滅を救おうとするものの、面倒臭いから栃木ごと略奪しようっていう――根っからの悪党ではない連中なんだよね」

「根っからの悪党ではないだけで悪と呼ぶに相応しいエゴイストだよね……? てか戦う前に話し合いでどうにかなりそうな内容じゃない?」


 ――と。


「どうやら香織はさっきから勘違いしているようだが、ガングリオンはロボットに乗って戦うアニメじゃないぞ? ロボットに乗って栃木県とドゥルワカシーが交渉ネゴシエーションするだけのアニメだ」

 これを言ったのはリーダーだ。

「ロボットに乗る意味なにっ? クリスタルガイザーとグライシンガーが合体する意味はなんなのっ!? てゆーかイカリングがロボに乗らない方が強いってのと『戦っちゃダメだ』って言ってたのはこの伏線!!」

 恐らくそれは考え過ぎである。

「それともうお約束だから一応ツッコんでおくけど『アストラゼネカ』はイギリスの製薬会社の名前ねっ!」

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