アニメ

 ――いつもの吉野


「ねぇねぇみんな。昨日の『双星そうせいのガングリオン』見た?」

 と突然切り出したのは座敷童子だった。

「え……ガ、ガングリオン?」

 香織が頭に小さな疑問符を浮かべていると横からリーダー。

「なんだ知らないのか? 今SNSを中心に、大喜利で当てられてもいないのに勝手に答え出す若者の間で人気のロボットアニメだぞ?」

 これに香織は頬に汗を垂らし。

「た、確かにリーダー達ってそんな感じだけど……。いや、それは置いといてロボットアニメなのガングリオンって? 病気の名前じゃなくて?」

「病気? 何をバカな。香織……お前もしかして関節にしこりとか出来てるんじゃないか?」

「いや、それがガングリオンって病気じゃん! やっぱり知ってたのね!?」


 っという香織のツッコミは無視され三世。

「それはともかく、もしかして見てないんですか香織さん? ガングリオンは惑星ドゥルワカシーの侵略から栃木県を守るロボットアニメで、ガンダムやエヴァンゲリオンを存在感だけは超えているって言われている今世紀最大の問題作なんですよ?」

「うん。見てないし、そこだけ聞いても問題作なのは良くわかる。でもそれよりドゥルワカシーって沖縄料理の名前だよね?」

 としているとリーダー。

「安心しろ香織。惑星ドゥルワカシーの主食はサーターアンダギーだ」

「それで何を安心しろっていうのっ!? あとやっぱドゥルワカシーにサーターアンダギーって沖縄じゃん!」


 ――と。言っている香織は更に無視され話は進み、お次は童子。

「じゃあ主人公のイカリング・シンジ君と相棒のムロ・アレイ君も知らない感じ? 結構有名なキャラなんだけど……因みにイカリングってのはイカの現在進行形ね」

「イカの現在進行形ってイカリングっていうのっ!? 初耳なんですけどっ! てゆーかイカの現在進行形ってなにっ?」

「いや、イカリング・シンジはリングネームで本名はイカ・シンジだから現在進行形でイカである事は間違いないな」

 これを言ったのはリーダーである。

「えぇっ! リングネームって事はイカ・シンジまさかのプロレスラーとかプロボクサー? 中学生くらいの男の子だと思ってたのにっ」

「プロレスラーだ。故に類稀なる戦闘力を有しており『戦っちゃダメだ。戦っちゃダメだ……』が口癖で、ロボに乗らない方が強いんじゃないかとまで言われ、その余りの強さに普段は拘束具を漬けたまま戦っている」

「エヴァみたいにロボットが着けてるんじゃなくてパイロットの方が拘束具着けてんの!」

 というところで半笑いの童子が片手を振りながらカットイン。

「あ、違う違う香織女史。拘束具は漬物みたいに漬けられてるって事」

「何やってんのイカリング! もう明らかに宇宙人の侵略なんて片手間で阻止してんじゃん!」


 ――なので今世紀最大の問題作なのである。

 

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