私③
この間、会社の上司に渾身の右ストレートを喰らわされた時に思った事がある。
最近はコンプライアンス、コンプライアンスでテレビやユーチューブの動画等は過激な表現を避ける傾向がある……と。
例えばユーチューブなどでは「殺す」という言葉は「◯す」「56す」や「死ぬ」といった言葉も「◯ぬ」「4ぬ」としたりする事がある。無論これらはほんの一例で、他にも過激な表現を避ける方法として最近のニュース番組では「暴力」という言葉を「過激なボディタッチ」とし、暴力団は過激なボディタッチ集団と呼ばれたりしている。
他にも「バトル」や「闘い」といったものは「拳で語る」ではなく「フィジカルコミュニケーション」と呼ばれているので、スポーツニュースの時間になると相撲は「ふんどしフィジカルコミュニケーション」と呼ばれたり、プロレスは「海パンフィジカルコミュニケーション」と呼ばれたりし始めている。
……という事を踏まえて。
これからのコンプライアンスな世の中に対応すべく、私も柔らかい表現をいくつか予め用意しておこうかと思う。
例えば、まずは航空機を強奪する――いわゆる「ハイジャック」。これは「こんにちは太郎」なんて具合にするのが良いだろう。
次に「露出狂」。これはまぁ「全裸で女性を見学しに行く紳士」辺りが妥当だろうか。無論、男の露出狂の場合の話だが。
次は「放火魔」。これは少し難しいが――まあ「全裸で建物に火を放つ伝道師」辺りがマイルドだろう。
更に次は「脅迫」。脅迫とは脅しや威嚇の事だが、大事なのは何を用いて脅し、相手に恐怖心を植え付けるか? ……である。なので脅迫は「うんこを使っての脅しや威嚇」辺りが絶妙なラインだと私は踏んだ。
えーっと。更に次は「テロリスト」辺りを攻めてみるか。テロリストは過激なボディタッチや過激なボディタッチによるうんこを使った脅しや威嚇で政治的思想を通そうとする集団だから――「過激なうんこ」でいいか。……ん? あぁ~そうなると「過激なうんこをするVチューバー」はサイバーテロって事になるか。
良し。とりあえず今日のところはこれくらいにして、そして以上の事を踏まえて今日も動画を撮影するとしよう。
――後日。
あれだけコンプライアンスに配慮したのに何故か私の動画は炎上した。……あ、いや全裸でコメント欄に火を放たれてバズった。
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