07真夜中の訪問者、そしてUNO
「…ど、ちら様で…「よぉ、昼間ぶりだn」ガチャン
あぁ、これは紛れもない
「悪夢だ……」
ずるりと玄関に尻をつく。ドアの向こうには、左側の裂傷、変色した瞳、そして赤く上気した頬。そう、昼間の自称勇者が今ドアの向こうにいる。
何故だ?ガンジャは脳味噌をフル回転させる。
ガンジャは彼らに住所はおろか、名前だって教えていない。
まさか、尾行された?いやまさか。確かに解呪の恩はあるが、それがこのストーキングに直結するとは考えにくい。仮にコレが解呪の恩から来るものであるならば、完全に仇である。
……では、何故?
そこで、1つの出来る事ならば考えたくない結論が出た。
「人身売買」 ヤツらは、勇者の皮を被ったソウイウ所のソウイウ人間なのではないか。最近、遠くの国の勇者がソウイウ国の関係者である事が報じられたばかりである。
だからと言って、浅はかな考えでそう言った結論を急ぐのは悪手と言うものだ。
しかし、……と思考の悪循環に陥っていた折、リビングからロマネスコが顔を出した。
「おい、ボウズどーした?そんなトコ座り込んで……」
「っ!あ、あーゴメン‼︎……ただの宗教勧誘だったy……「だぁれが、宗教勧誘だってーのぉ?」ヒッ!」
「なんだよ、まだ外にいんかい?……ボウズは部屋戻ってな。兄ちゃんが相手しとくから」
「えっ!ちょっと‼︎」
「ハイハーイ」と言ってロマネスコがドアを開けてしまう。
そこには、酔っ払いと喫煙者、そして美男がUNOをしていた。
「いやっ‼︎なんで、UNOやってんだアンタら⁈」
「んぉ?開けてくれる気になってくれたんけ?やっさしーね」
思わずツッコんでしまったガンジャに構わず
「UNO……はい今回も私の勝ちですね。と言う訳でこの唐揚げは私のものです」
「クッソォォ‼︎‼︎コレで20連敗じゃねーか‼︎」
後ろでは、決着がついたのか
「すまんね、ガンジャが驚いちまったらしい。まぁ、外はなんだ。家上がってけ」
「わぁい、かったじっけなぁいれーす❤️」
ユルユルの顔を更にユルユルにして、ニコラス一行が家に上がる。
なんだコレは、どの時空の百鬼夜行なのだ。いや、間違いなく今オレの目の前で起きている事だ。
今日はとんだ厄日だ。オレが一体何をしたと言うのだ。ただ、ギルドにライセンス登録をしに行っただけだと言うのに!
なんか、一気に生気が抜けた気分である。ガンジャは、おぼつかない足取りで自分の部屋へと戻っていった。
リビングからは4人の声が僅かに漏れている。何を話しているのか、の詳細は聞き取れなかった。
_________________________________________
ハルミヤ地方 ロゼルトタウン ガンジャ宅 ガンジャの部屋
部屋に戻り、ベッドに寝転ぶ。半端な長さの髪がベッドにぱさりと広がる。どっと疲れが押し寄せてくる感覚がした。
さて、軽く状況を整理しよう。
1.ガンジャはハルミヤ地方の中心であるトウグウの冒険者ギルドに、ライセンス登録をしに行った。
2.登録が終わりギルドを出てすぐニコラスに誘致された。
3.誘致された先でクラップスの助けも借り、モモヤマに掛けられた呪いを解いた。
4.なんか怖いから逃げてきた。
5.インターホンが鳴り、見に行くとヤツらがいた。
6.ヤツらとロマネスコが四者面談をしている。←イマココ
さて、どうした事か。
ゴロゴロと寝返りをうちながら考える。立ち向かうか?いや、そんな事をしたら最悪殺される。ヤツらはちゃらんぽらんの様だが、あの廃ビルで見た身のこなし。
伊達に勇者はしていないのだろう。実に困った。ロマネスコが何かされていなければ良いのだが……ふと、そして
「ロマ兄っ‼︎」
大切な家族、そしてたった1人の兄だ。
あぁ、何故オレはそんな大切な
後悔だけがガンジャの胸を掻き乱す。
もう、突撃しか……そう考えた時、階下から
「オーイ!ボウズ、ちょっと来てくれや!」
と、ロマネスコの呼ぶ声。
乱暴はされていない様だ。ひとまず安心。
さて、何故呼ばれたのか。 心臓が今までにないほど生き急いでいる。喉から心臓が出てしまいそうだ。
意を決して部屋から出る。
リビングへと行く道のりが果てしない様なものに感じられた。
リビングのドアノブに手を掛ける。
ゆっくりと押す。
この先の景色は地獄か天国か。
ガンジャは一生分の腹を括ったつもりで、リビングへと足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます