03救世主とか恩人とかって言ったもん勝ち感あるよな
「さていい加減本題に入るわ。……コイツの呪い解いちゃくれねーか」
酔っ払いの真剣な眼差し。交錯するは、素面の戸惑いの目。今しがた、この酔っ払いは何と言った?
「呪いを解け」だと。
「…で、きないことは、無い、ですケド…」
先述した通り、ガンジャはネクロマンサーである。
ネクロマンサーは、通常死霊を操る等の魔術を扱う。そこには無論、呪いの類も含まれている。さて、ここでガンジャであるが彼は死霊を操る才が無い。操ろうとすれど、死霊が確立した自我を持ってしまい、操ることが困難になってしまうという具合だ。 それを、哀れに思ったのか神はガンジャに呪いを中和する血をお与えなさったらしい。
緋色は、ガンジャの返事を聞いて眉を訝しげに歪める。
「何でぃ、その、歯切れの悪い返事は?……やりたくねぇなら無理せんでも… 「いや、そういう、訳じゃ、無くって…」 …んじゃ、どういう訳で?」
また、言葉に詰まる。こういう時、スラスラと言葉を繋げられる人間が恨めしくなる。
ガンジャは唇を噛んだ。
しかし、本音はやりたく無いのだ。その時、少しばかりの進展があった。
「ッ……ニ、コラ、?グッ……」
「ん?あ、おそよーモモヤマ。大丈夫そ?」
「ハッ…河の向こ、うに親父のッ…ツラァ見る…位にゃッ、元気……だッ」
「テメーの親父、まだ死んでねーだろ」
軽口を言える位には、元気そうではあるが顔色は最悪である。どうやら、迷っている暇は無さそうだ。
「っ!や、やります!呪い、解きますっ!」
思わず、出た自分の声が想像よりも大きかった事に驚きつつガンジャは緋色と、先程目を覚ました和装の男に目を向ける。バチリと、酔っ払いと目が合った。
「そーか、やってくれるかぃ。モモヤマ、これで助かるってよ」
「そこで、1つお願いが…」
「ほーん、何よ?」
「聖水1瓶と、よく切れるナイフ……あと度数の高いお酒、あり、ますか、ね?」
語尾が萎んでいく。おそらく断られることは無いだろうが、やはり知らぬ人に頼み事をするのは気が引けて行くのである。
「聖水と、ナイフと酒ね?あるわ、全部。………ホレ、使いな」
緋色が、ガサガサと荷物を漁りガンジャに全て手渡す。
受け取ったガンジャは、和装男の傍らに膝をつき儀式の用意を始める。
「……さぁ、やりますよ!」
ガンジャの声が、廃ビルに木霊した。
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