02廃ビルってなんかワクワクする
ハルミヤ地方 カジノ花唄 裏路地
ズンズンと湿っぽい闇の中を進む影が二つ。
緋色のマントと漆黒のローブが、足元を戯れながら揺れている。
漆黒のローブ、もといガンジャは恐怖に慄いていた。酔っ払いの先導のままここまで来てしまったが、果たして自分は生きて帰れるのか……絶望的観測のもと、おそらくは無理だろう、という結論が導き出される。
そりゃそうだ。こんな路地裏に連れ込まれたのだ、よくてカツアゲ。最悪は人身売買。もう駄目かもしれない、今までありがとう父さん、母さん。出来損ないでごめんなさい!
心の中で遺書を書き連ねていると緋色のマントが足を止めた。つられてガンジャも足を止める。
あゝ哀しきかな、オレはここで果てる運命か……
悟った時、奥から足音が聞こえた。
「あぁ、ニコラスさん。おかえなさい、心配していたのですよ」
「スンマソン、ンでモモヤマは?」
「私の回復魔法で進行を止めています……が、一時的ですからあまり持たないかと…」
「マジ?んじゃネクロくん、あとは頼んだ」
「……は?え、頼んだって、何をですか⁈」
また腕を掴まれる、そして緋色のマントは走り出した。ガンジャも走る。一体どこへ連れて行くというのか?そして先程の男性は誰なのか。聞きたい事は山積みなのだが、何故かガンジャは口を開けなかった。
何せ、緋色の顔が出会った頃より真剣な色に染まっていたものだから。
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ハルミヤ地方 旧生命保険メイラック支店ビル 3階
裏路地を進んで左に曲がる。そして、錆びた鉄の階段を登り廃ビルの3階。おそらくは、会議室として使われていたのであろう広い部屋に入って行く。
そこに、腹を黒染めにしている男がぐったりと座り込んでいた。
「おーい、モモヤマ。返事できる?救世主連れてきたぜ」
しゃがんで、声をかける緋色のマント。救世主…とは、ガンジャは内心首を傾げる。遅れて、先ほどの男も到着した。
「はぁっ…はっ、ニコ、ラスさん…っ!き、急に、はっ、走らないっで、ふっ…くださっ!」
肩で息をきらせながら、ヨロヨロとこちらへ向かってくる。
さっきは、暗闇であまり見えなかったが、なんとも美しい顔立ちをしている。
ガンジャが感心していると、ローブの先を緋色の男がグイッと引っ張った。
「さていい加減本題に入るわ。……コイツの呪い解いちゃくれねーか」
酔っ払いの目に、閃光が走った。
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