チュートリアルは飛ばすべからず

01昼間の酔っ払いに碌な奴はいない

冒険者ギルドB1 登録窓口


「……はい、登録完了しました。ライセンスはF1受付にて発行いたしますので少々お待ちください」

「あ、ありがとうございます…」


マニュアル通り、淀みのない対応。滞りなく美しく動く手。ぼんやりと眺めていたら、どうやら終わったらしい。

差し出された資料諸々を受け取り、彼ガンジャはF1へと向かう。


ガンジャは今年17歳になった新米のネクロマンサーだ。通常、ネクロマンサー含むほぼ全ての魔導士は16歳を過ぎたら冒険者ギルドに名前を登録するのが決まりである。彼は、その儀式ともいえるライセンス登録を今しがた終えたばかりであった。あとは、のんびりライセンスの発行が終わるのを待つだけだ。


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冒険者ギルドF1 総合窓口


さて、F1へと戻ったガンジャは総合窓口の待合席で資料を読むことにした。

つらつらと書かれた冒険者注意事項やその他備考を読んでいく。ランクが上がれば受け取る報酬が増えるとか、ランクにあった仕事しか受注できないとか…あとは、街の設備について。要は、チュートリアルである。

ピンポーンと、間抜けな呼び出し音がガンジャの意識を現実へ戻した。

「受付番号096の方、総合窓口2番までお越し下さい」

「はーい」


約数分、発行されたばかりのライセンスを手に収める。

これで、ガンジャも正式に冒険者へ仲間入りだ。ホクホクとした顔で出口へと向かう。時刻は、ちょうど昼時。折角、都会へ来たのだから何か良いものでも食べようか。

なんて考えていた……その時、緋色のマントを纏った男がガンジャの腕をガシッと掴んだ。顔の左半分が焼け爛れ、片目も白く変色してしまっている。

そして、異様に顔が赤い。


「なぁ、オマエさん魔法使いだろぃ?それに、……ネクロマンサーと来た…ちょいと来てくれねぇか?」

「は、、え?き、急になんですか?」


「いいから、来なせぇ」と無理矢理腕を引かれる。体温が異常に高い、それにトロンとしていた目。おそらく酔っ払いの類だろう。

不幸にも、ガンジャは冒険者になり10分足らずで酔っ払いに絡まれてしまった様だ。


「あ!あの、い、一体どこに…」

「いいから、着いてきてくれぃ……悪い様にはしねぇからよぅ」


ガンジャは、少し泣いた。

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