もう終わりだよ、このパーティー

常世 悟廻

プロローグ


約5000年前

この世界に初めての勇者が生まれた。

この時、人間と魔物は対立の道を選んだ。


約3000年前

2人目の勇者が生まれた。魔界にも新しい魔王が誕生した。

やはり、人間と魔物は対立する事を選んだ。


約1000年前

⬛︎人目の勇者が生まれた。魔界には、何も無かった。

もう、対立は無くなったらしい。死んで行った⬛︎人の勇者が功をなしたのか。


約800年前

魔界に新しい魔王が生まれた。世界が祝福した。

人間も、祝福したという。


約500年前

勇者も魔王も生まれなかった。

なのに、人間と魔物は争った。争いは100年続いた。


約200年前

どうやら、争いに飽きたらしい。

人間と魔物は手を取り合った。


約150年前

大幅な技術革命が起こった。

世界が豊かに進歩した。人間と魔物は同じ地で暮らす事を選んだ様だ。


約50年前

幾人目かも分からぬ勇者が生まれた。

争いの象徴だと言われ忌避された。


約40年前

勇者の使い道が決まった。

勇者は外交の道具となった。勇者は政府の飼い殺しとなった。


約20年前

教会一揆が起こった。

あらゆる国の教会が打ち壊され、孤児たちが暗闇へと売られていった。


約15年前

とある地方の龍脈が暴走した。

周辺地域が焦土となり、ある少年が絶望した。そして、とある侍が名を捨てた。


約12年前

村を焼かれた少年が勇者と成った。

そうして、世界には勇者が4人。世界は変わらず時を進める。


約10年前

少年が現実に泣いた。

彼には、死霊術ネクロマンシーの才が無かった。


8年前

美しい青年が黄金の都市を手放した。

曰く、閉じ込められるだけの生活に飽きたらしい。青年は、再びロザリオを手に取った。




………記録はここで途切れている。


世界は変わった。少なくとも、魔物と対立していた数百年前よりかは。

古びた紙の匂いとインクの匂いが鼻腔を擽る。燭台の火がゆらりと輝く。


記録者は笑った。黒いローブが悪戯に揺れる。

羽ペンがフワリと宙を舞い、光の粒子となってキラリと消えた。

物語は始まったばかりである。

余りにも馬鹿げた、碌でなし者どもの冒険は。


たった数刻前に始まったばかりであった。





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