第2話 優しさですが?

「うわ、なんか通知が半端ねーな。なんだよ」


 突然溢れて止まらなくなった通知に、俺は眉根を寄せて、アプリを開いた。

 見れば、DMとリポストの通知が半端じゃなかった……が。ザッと目を通して見た感じ、昨日俺が送りつけた優しさに食ってかかる馬鹿ばかりだった。


 俺は「あー、うざってぇ」と忌々しく呟きながら、さーっと画面をスクロールしていく。

 

 だが、通知やら何やらが俺のアカウントに一気に流れ込みすぎているせいで、画面がうんともすんとも言わずに固まったり、変なバグを起こし始めた。バシバシと叩いても画面は元に戻らない。と言うか、戻ろうにも戻れない状況に陥っていた。


「チッ、マジでクソだな。俺は何もしてねーってのによ」


 使い物にならなくなった携帯を横に放り投げると、ボスッと布団に荒々しく着地するが。俺は投げた携帯を気にする事もなく、パソコンを急いで立ち上げ、同じアプリを開き、もう一つのアカウントに入り込んだ。


 俺はダダダッと素早いタイピングで、画面上に文字を並ばせる。

『もう一つの垢が馬鹿と阿呆のせいで使いもんにならなくなった、最悪、クソ』

 投稿。

『俺、何もした覚えがなくて炎上してるんだけどwマジで俺に突っかかってくる奴、全員自分の投稿の馬鹿さを分かった方が良いよw』

 投稿。

『赤ペン付けるとか烏滸がましいとか言ってる奴もいるけどさ。優しさだからね? それ分かった方が良いから、マジで。優しいから、こうすれば? って言ってんの。それが分かんないとか、お前等終わってるよw』

 投稿。

『俺のアドバイスは優しさ。それを受け取りもしない奴なんて売れねーから。だって、人からの優しさを受け取れない奴とかクズだもん。小説家なんて辞めた方が良いって話。分かるか、馬鹿共😊」

 投稿。

 

 俺は怒りを全てぶつけ終わると、はぁと椅子の背もたれにもたれかかった。

 

 本当に世の中馬鹿ばかりで嫌になるわ……。

 

 ふうとため息を吐き出しながら上半身を起き上がらせると、うっすらと反射する画面のせいで、苛立ちと呆れを孕んだ自分の目に見つめ返された。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る