貴方に赤ペンを付けてあげますよ
椿野れみ
第1話 優しさの赤ペン
『これ、あんまりにも酷いんで、俺が赤ペン入れてあげましたよwそうしたら一人前程度には良くなると思うんでwまぁ、元が酷すぎるんでねw直した所で駄作には変わらないと思いますがww』
真っ白だったはずの画面に、文字をパパッと並ばせてから、俺は投稿のボタンを軽くタップした。
シュポンッと心地良い音が響くと同時に、パッと画面が切り替わり、俺の優しさがこの作者に届いたと分かる。いや、この作者だけではない。発信された俺の優しさが、全世界に広がったのだ。
俺はホームに戻った画面を軽く操作し、赤ペンを入れてあげた作者のアカウントに飛ぶ。
某人気漫画のキャラクターがピースをしているアイコン。一言メッセージの欄には『アイコンは友達のあーちゃんが描いた推しだよん♪誰もが楽しめる小説を届けるね♪』と、クソみたいな文字が並んでいる。だが、注目すべきはそこではない。
その下に表示されているフォロワー数だ。なんと、このクソみたいな作者に三万三千八十六人ものフォロワーが付いている。今も尚、スクロールして更新すると、一人、二人と数字が一桁ずつ繰り上がり続けていた。
俺が見た時も一万近くのフォロワーがいたが。投稿した小説の一つがかなりバズったおかげで、一夜にして二万人以上を増やした訳だ。
「はー、こんな駄作を作る奴に三万以上のフォロワーとはな。世の中は審美眼もねぇ馬鹿ばっかりかよ」
ほんと阿呆ばっかでヤな世界だわ。と、へらりと曲がる口で呆れと軽蔑を零してから、俺は画面をサッと戻して、新たに自分の優しさを届ける相手を探し始めた。
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