第10話 はじめての転生補助

そんな二日間が過ぎて。

とうとう初めての転生補助をやるときがきた。


えっと、最初は、自分の体を選ぶんだったか。

「紙よ、転生を始めよう」

これが始める合図か。なんかだっせー。

「さぁ、実験を始めよう」

と、あんまり変わらんか。あっちはなんかカッコイイんだよなぁ。やっぱ顔か? スタイルか?

紙がするすると宙に浮き、文字を浮かべる。

まあ「めがみ1」しか今は選べないんだが。

さっそくめがみ1をポチッとな。

自身が一瞬光る。消えるとあら不思議、女神様、降臨。

ふむふむ。受肉って感じだな。

腕、足。ぶんぶんと。痛みと重さと。

この感覚こそ、「生きてる」って感じ。うんうん。

肉体ってすげーな、肉体があるっていいね。

意味なく色んなポーズを決めてみる。

「剣とかベルトとかって作り出せないのかなぁ?」

ぽつりと口から本音がこぼれる。

すぐに紙が反応する。

『机をつかいましょう』

?!

お、まじで? できるの?!

飛ぶように白い机に近づき、天板部分に触れる。机がふにゃりと形を変える。

棒きれのように一部が切り取られる。

おっ、いいぞ!

変身ギミック付きの剣を思い浮かべる。

するすると色を付けながら形が変わっていく。

き、き、きたーーーーっ!

手の中に王様が持ってそうな剣が作られた。

「●●武装!」

青のポーズを決める。

くうーーーっ! 決まった!

おっと体は女神なんだったな。

黄のポーズを。「●●武装!」

うんうん、こっちは服装もそれっぽいし、かなり決まってる!

テンション爆上げ!

しかし、机にこんな機能があったとは。

出てきたときに舐めたりしたのに。

あれ? そういや、体がある状態で机を触るの、始めてか。

体があると、いいことあるんだね。

……女の体がいいって意味じゃないからね!!!


さてとさてさて。さくさくっと次へ進もう。

「●●武装!」

赤のポーズを決める。

うん、いいかんじだ。

入れ換え回っぽい。うんうん。よきかな、よきかな。

中味おっさんなのは隠しておこう。

次は転生者を選ぶ。

最初、一発目。ここはまあテンプレのトラックで行こうと思う。

紙が画面になる。

手を触れながら場面を想像する。

想像に近いシーンがある地上にズームしていく。

夜。踏み切り。

自殺しようとしてる人。

(トラックじゃないじゃん!)

まあ、いいか。都合よくトラック事故なんてそうそう、無いし。

電車が来る直前、遮断機をくぐる男性。

警笛、ブレーキ音、ドシャ! あーあ、やはりぐろんちょ。

紙が本になる。

手もとで開く。

  転生者 黒木 準

  年齢 40

  職業 無職

  体調 鬱

  ラノベ 習得済み

  転生難易度 0

あー、うん。まあ、その、なんだ……。

転生難易度が低いのって……つまり……。不幸ってことか?……。

まあ、転生が救済なら、そういうものか。

というか、これから先、不幸な人ばかりに会うのか……俺。

いやだなぁ、なんか。

いや、まじで、なんというか、不謹慎なのかもしれんが。

会いたくないタイプの人、だなって。


光が前の空間に集まり、そして消える。

そこには「黒木 準」が石像のように固まっていた。

実際にやってくると「固まってくれて、ありがとう」って思っちゃう。

転生先とスキルを、先ず本を見て決めておくんだよな。

……。

あ、会話。

会話、どうしよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る