第6話 会話

「あれ? ここは?」青木が動いた!

はじまっちゃったよ!?


「ごめんなさ~い♡」

口が? 勝手に? 動いて?

「手違いで死んでしまったんですぅ」

俺は何も言ってない……。イッツ、ホラー。

「え? 死んだ?」

「そうですぅ青木さん!」

俺の口が勝手にしゃべってる……女性の声で……。キモチワルイ。

「もともと死ぬ予定じゃなかったんですぅ。手違いで青木さんは死んでしまったんですぅ。ほんとうにごめんなさい♡ なのでー、ここにー、連れてきちゃいました♡」

(うそっ! ラノベの異世界転生か? これ。つーか女神かわいいw)

うっ、思考が。青木の考えが頭に響いてくる……。

「かわいいだなんて、もう青木さんったら!」

(思考が読めるの!?)

「はいっ女神ですからっ♡」

……おいおい、なんだこれは。

手足も勝手に動いてる。視覚が自分意識で動かせないの、結構つらい。映画見てるような感じではない、違和感がすっごい。VR? ぽいのだろうか。VRをやったことがないのでわからんが。

「それでですねぇ(元の世界には)戻れません! (また読まれた!)残念ですが。そのかわりー、最大限んー、優遇ぅさせて戴きます!」

……オレハ ナニヲ ミセラレテルノ? どんどん会話が進んでいく。勝手に。チュートリアルの意味は? 『次は会話の仕方を学びましょう』ってなんだったんっすか?

「たとえば?」「えっと、そうですねぇ。おわびとしましてぇスキルをちょっと大目に」「え~! それだけ~!? だって手違いでしょ? もっとドバッとくださいよぉ」「えーでもぉ(かわいいんだからさぁ)きゃーw じゃあぁ……」

……ぐはっ! 駄女神ムーブ! ……これが、チュートリアル。テンプレ。こういうふうにしてください、の見本? なのか?

駄目だ。頭がくらくらする。

会話が入ってこない。

「……というわけで、異世界を楽しんじゃってくださいね♡」

青木が満面の笑みで消えていく。

消えると同時に俺の女神の体も光とともに消えると、そこには元の半透明な俺がいた。

『いじょう ちゅーとりある しゅうりょう』

……っくっそ!! 

拳を握りしめる

……言いたい事が山ほどある。

あるにはあるが、うん、まあ、いい、いいよ、べつに、今は。

しばらくじっとした後、白い天を仰ぎ見る。

ふう。

よし。

「どうやら俺は、駄女神に転生したらしい。件。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る