第4話 紙と神

『ちゅーとりある はじめますか?』

「駄洒落は無視かよ!」


と、いうか、だ。

『あとをたのむ』

『ちゅーとりある』

これが意味するところ。

……しばし考え中……。

これって、やっぱり。

「この白い世界で女神の代わりをやれってこと? 女神を? 女神をやる? 男のおれが? は? なんで? そんで異世界転生の手続き? 手伝い? をすんのか? つーか白いここは、やっぱ転生用の世界で確定なのか?」

紙の文字が消え、新たな文字が浮かぶ。

『ちゅーとりあるをはじめます』

「やっぱ無視かよ!」

紙は宙に浮いたままだ。

もう紙が神ならなんでもありだ。

というか、ここは白い世界。もともと神の領域。なんでもありの、あり寄りのありだ。

『さいしょは からだを せっていします

 ちゅーとり なので めがみ1 しか えらべませんが』

薄い体が光り出す。

おおおおお?

透明じゃなくなっていく!

どこぞの女神らしい体に変化していく!

女神らしい服装がどこからか!

おおおおすっげーー!

ヤッベー! リアル変身だよぅ!


変身に感動する間もなく、次の指令が。

『体を設定しました。次は転生者の選択です

 チュートリなので決定済みの転生者しか選べません』

お? 紙に漢字が出るようになった? 女神の体が貰えたからだろうか。

そんな疑問をぶつける暇もなく、紙がテレビ画面のようになる。

どこかの風景が映し出された。

「おう、便利やな」

『本番はここで選びたい転生者の特徴を想像してください』

「おう、想像やな」

交差点。男が信号を待っている。

あ、定番のやつだわこれ。

トラックが暴走してる。やっぱり。

子供を助けようと男が飛び出す。

「あかんっ」

どかん。

あーあ、グロいっす。

画面が消え、文字が浮かぶ。

『チュートリ転生者を選びました。事前情報を提供します』

紙が本のような形になり、手もとに来る。

本が開かれる。

  チュートリ転生者 青木 啓吾

  チュートリ年齢 23

  チュートリ職業 サラリーマン

  チュートリ体調 寝不足

  チュートリラノベ 習得済み

  チュートリ転生難易度 0

ずらっと情報が載っている。

いちいちチュートリと付いていてうざい。

なるほど、こうやって事前にその人となりを知ることができるのか。

っていうか、項目数、めっちゃくちゃ多いな。メインの6つ以外にもすげーある。

家族構成や友人関係、ペットや今まで食べたもの、行った場所なんかもある。項目にはサブ項目もあるようだ。多過ぎです。

彼自身の方を見てみよう、と。学歴から善行悪行、蚊を殺したとかも載っている。こまかすぎ!

けが、病歴、食歴、貯蓄、……おっと性癖まで? まじで? おいおいおい、プライバシー保護とか無いのかよ……。

そこはオブラートに包むというかさぁ、隠しておいてやれよ。

うっげっ! 初めての●●とかもある……。

いやー、まじできついな。これ。秘密は蜜の味、なんていったりもするが、他人の人生まるまる明け透けになって見れるっていうのは、きつい。蜜じゃなくて毒だ。あ、人間に効果がある毒も、別の動物だと無毒、とかもあるんだよな。無駄知識。

しっかし、ありとあらゆることがのってるこの本、結構、やばい。

…。

……。

………。

あれ? 俺も転生者だよね?

ここに呼ばれたんだよね? 俺。

……ん。……んん。……んんんんん。

「イヤーーーーーーーー!!!!」

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