第18話 初めての冒険者ギルド
シュバルツと決闘した日の翌日、学校に行くとすでにシュバルツが来ていた。
「おはよう。」
「ああ、おはよう。」
僕が席に座るとシュバルツが僕の右に座った。すると、少し遅れてやってきたマリアが怒り始めた。
「あ~!そこ私の席!」
「別に席は自由だろ!反対側に座ればいいじゃないか!」
「仕方ないわね~。それで、どうしてシュバルツがあんたの隣にいるのよ!説明しなさい!」
「簡単だよ。友達だからさ。」
「友達?」
「そうさ。シュバルツは僕の友達さ。ねっ!」
「ああ、そうだ。同じ目的を持った同士でもあるけどな。」
「何よ?同じ目的って?」
「俺達だけの秘密さ。」
「キモイー!あなた達男同士でしょ!」
するとそこにマイケルとシャリーがやってきた。
「えっ?!どうしてシュバルツが一緒にいるの?」
「またそこから説明か~。」
こうして、僕達は4人から5人のグループになった。
その頃、王都のカザリオン侯爵家の屋敷では、バッハ侯爵とロベルト辺境伯が密談をしていた。
「まったく、あのバカな国王は何を考えているのか。この国の奴隷制度を廃止するなどありえんことだ。」
「確かにそうだな。我らの商売がダメになってしまう。それに、我が領地と隣接しているオスマイ帝国の貴族どもから苦情が出るぞ!貢物ができなくなるではないか!」
「オスマイ帝国のトラヤス皇帝が言われる通り、早くスチュワート王家を亡ぼした方がよさそうだな。」
「バッハ殿。だが、今はまずいぞ。王族派の連中も、先だってのマリア王女の襲撃で相当警戒しているからな。」
「ならば、もう少し様子を見るか。」
そして月日が経ち、僕達は冒険者登録できる13歳になった。僕達も4年生だ。4年生からは専門的なコースへと別れる。大まかには文官コースと士官コースだ。文官コースでは、建築、経済、医学、薬学、法律などを学ぶ。一方の士官コースでは、剣の訓練や戦闘訓練が中心になる。因みに僕達5人は全員が士官コースに入った。
「お父様。お母様。お願いがあるのですが。」
「どうしたの?アスラちゃん。」
「僕は士官コースに決めました。だから、冒険者登録をしたいのですが。」
「なぜだ?学院の授業だけでは不満なのか?」
「いいえ。学院で学んだことを実践したいんです。伯爵領の森にはいまだにたくさんの魔物がいると聞いています。人々が安心して暮らせるようにしたいのです。」
お母様が心配そうにお父様を見た。
「わかった。許可しよう。ただし条件がある。絶対に無理はするな。危ないことも禁止だ。わかったな。」
「はい。」
翌日、両親の許可をもらった僕は、マリア達に聞いてみることにした。
「僕さ~。13歳になったから冒険者登録するつもりだけど、みんなはどうする?」
「俺も登録するぜ!」
「私はお父様に聞かないとわからないわ。」
「そうよね~。マリアさんは王族だもんね~。多分、私は許可されると思うわ。」
「僕も大丈夫!むしろ、父上からアスラ君の手助けをしろって言われているからさ。」
そして数日後、学院に許可を取って僕達は冒険者ギルドに登録に来た。受付には胸の大きな美人がいた。
「何か用かしら?」
「僕達、冒険者登録したいんですけど。」
受付の女性がマリアを見て慌てて2階に上がっていった。どうやら王城から話が言っていたようで、2階からギルドマスターが降りてきた。
「私はこのギルドのマスターをしているモーガンです。皆さん。私の部屋においでください。そちらでお話を伺いましょう。」
1階で酒を飲んでいた冒険者達が不満そうに見ている。
「ギルドマスターのあの態度は何なんだろうな!」
「どうせ貴族のお坊ちゃま達なんだろ!」
「冒険者は遊びじゃねぇんだけどな~!」
「まあ、あの金髪の子はかわいかったから許可するけどね!」
「ギャレット!お前は色男に甘いんだよ!」
「違うわよ!年下の美少年に甘いのよ!」
2階のギルドマスターの部屋に行くと、ギルドマスターが丁寧にあいさつをしてきた。
「宰相様から話は伺っています。皆さんの冒険者登録をすればよろしいんですよね?」
「モーガンさん。僕達はまだ学生です。敬語なんて使わないでください。それに、敬語を使うと怖い姫様に怒られますよ!」
「アスラ!怖い姫様って何よ!私のこと?」
すると、シュバルツが小さい声で言った。
「他に姫様なんていないじゃねぇか。」
「あんた達ねぇ~!覚えてなさいよ!」
ギルマスの部屋で待っていると受付の女性がカードを持ってきてくれた。全員がGランクからだ。カードを受けとった僕達が1階に降りていくと、酒場の冒険者達が睨んできた。僕達は彼らを無視して掲示板に向かった。
「何か依頼を受けようか?」
「シュバルツの言う通りね。せっかく冒険者登録したんだから私も依頼を受けてみたいわ。でも危険じゃないものがいいわね。」
「これなんかどうかな~?薬草集めなら安全よね?」
「そうだよね。さすが、シャリーさんだよ。」
「おい!マイケル!魔物を討伐するために登録したんじゃねぇのか!」
「まあ、いいじゃないか。シュバルツ。初めてなんだし。」
「アスラがそういうなら、俺は何も言わないさ。」
すると、酔っぱらった冒険者が大声で叫んだ。
「お坊ちゃま達は犬の散歩でもしてた方がいいぞ!」
「違うだろ!ごみの片づけの方がましだぜ!」
ハッハッハッハッ
4人は無視している。だが、シュバルツだけは違った。
「今言ったのはお前か!」
「だったらどうするんだ?」
「今の言葉を取り消せ!」
「本当のことを言っただけじゃねぇか!」
僕は慌ててシュバルツのところに行った。
「だめだよ!シュバルツ!相手にしない方がいいよ!この人達は酔ってるんだから!」
すると、僕の言葉が気に入らなかったのか、一番奥に座っていた男が立ち上がってやってきた。2メートル近くある。
「お前さん。俺達のことをなめてるのか?俺達が酔ってるだと~!表に出ろ!」
するとそこにカレン先生がやってきた。
「お前達、何をしてるんだ?冒険者登録をするって言うから様子を見に来てやったのに!」
シャリーが慌ててカレン先生に事情を説明し始めた。
「なるほどな~。だったらお前達が悪いな!昼間から酒なんか飲みやがって!少しは働いたらどうなんだ!」
「なんだと~!」
体の大きな男がカレン先生に手を伸ばした。次の瞬間、カレン先生の拳が男の腹にめり込んだ。
グホッ
ドサッ
「おい!もしかして、あれって元Sランクの疾風のカレンじゃねぇのか?」
「ま、間違いねぇ!」
「やばいぜ!行くぞ!」
冒険者達は大男を連れてギルドから出て行った。
「ありがとうございます。カレン先生。」
マリアがお礼を言うと、カレン先生から意外な言葉が帰ってきた。
「違うさ。私はあいつらを助けたのさ。あのままだと、あの男の首が胴体から離れちまったからな。そうだろ?アスラ。」
「そんなことしませんよ。先生。」
「そうか。『しませんか』『できません』ではないんだな?」
「あっ?!」
マイケル、マリア、シャリーが僕を見てきた。
「やだな~。先生。言い間違いですよ。気にしないでくださいよ。」
「まあいいさ。それより登録はすんだのか?」
「はい。」
「なら今日はもう帰るぞ!」
「はい!」
その日は依頼を受けることなく家に帰った。
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