第13話 学院での生活が始まる!
自己紹介が終わった後、メリック先生が学校を案内してくれた。僕は一番後ろから一人で歩いていく。他のみんなはすでに仲良さそうに話をしながら歩いていた。
“アスラ!何を一人を気取っているのよ!他の人に話しかけなさいよ!”
“いいよ。別に。”
“友達が欲しいんじゃないの?”
“欲しいけど、今はいいよ。”
“恥ずかしいんでしょ?”
“違うよ!放っておいてくれよ!”
“みんな、あなたに話しかけづらいのよ。”
“どうしてさ?”
“だから言ってるでしょ!あなたが美少年だからよ。”
確かにリンの言う通りなのかもしれない。みんな時々僕の方をチラチラと見てくる。なんか疲れてきた。最初は一人で歩いていることが気楽に思えていたが、リンに言われてからはすぐにでも家に帰りたくなってきた。そんな時、第1王女のマリア様が話しかけてきた。
「あなた、確か~アスラだったわよね?」
「は、はい。」
「あなたのお父様って、ウイリアム伯爵でしょ?」
「はい。そうですが。」
「この前、私の馬車が襲われたときあなたもいたでしょ?」
「ええ。まあ。」
「もしかしたら、あなたと会ったのって偶然じゃないのかもね。」
「えっ?!何がですか?」
マリア王女の発言に戸惑ってしまった。それを察知してか、マリア王女も顔を赤らめてなんか必死に言ってきた。
「べ、べ、別に深い意味はないわよ。こうして同じクラスになったのも、なにか縁があるんじゃないかって思っただけよ。」
「は、はい。そうですね。」
「それはそうと、あなたって誰とも話さないのね?どうして?」
「別に理由はないですよ。」
「ふ~ん。いいわ。私が友達になってあげるわ!」
「は、はい。ありがとうございます。」
「あなたね~。そんなに綺麗な顔してるんだから、もっとシャキッとしなさいよ!勿体ないわよ!」
「は、はい。」
僕は生まれてからずっと大人達の中で暮らしてきた。だからか、同世代の人間には気恥ずかしさが出てしまう。ましてや相手は女性で、しかも第1王女様だ。僕が緊張するのも仕方がないことだ。僕とマリア王女が話をしているのをクラスメイト達が羨ましそうに見ていた。きっと王女様と仲良く話ができることを羨ましく思っているのだろう。
「さあ、今日はここまでよ。明日から勉強が始まりますからね。遅刻しないように登校してください!」
「は~い。」
学校が終わると、みんなは友達同士で帰っていく。第1王女のマリア様も帰っていった。疲れ切った僕は、しばらく教室で休んでいた。すでに教室内には僕しかいない。
“あ~。疲れたな~。”
“アスラ!まだ、始まったばかりでしょ!しっかりしなさいよ!”
“だってさ~。なんか気を遣うんだよな~。”
“友達を作ればいいじゃない?”
“どうやって話しかければいいのかわからないんだよ!”
“フン!男らしくないわね!”
“リンも王女様みたいなことを言うんだね。もういいよ。”
僕は荷物を持って校門を出た。するとそこに僕のことを待っていた者がいた。シュバルツだ。
「おい!お前!」
「僕ですか?」
「そうだ!お前だよ!お前、やけにマリア様と仲良くしていたじゃないか。」
「別にそんなんじゃないよ。」
「じゃあ、なんなんだ!」
ボコッ
シュバルツがいきなり殴ってきた。避けようと思えばよけられたが、後々面倒になりそうなのでわざと殴られた。
「あんまり調子に乗ってるんじゃねぇぞ!ホフマン家がどうなっても知らねぇからな!」
シュバルツは捨て台詞を吐いてその場から立ち去った。僕は鼻血を拭きながらトコトコと家に帰った。家に帰るとお母様が玄関まで走ってきた。
「アスラちゃん!お帰りなさい!学校はどうだった?」
本当は、学校は疲れるし行きたくないと言いたいところだったが、お母様とお父様を心配させるわけにはいかない。だから、当たり障りのないことだけを話すようにした。
「はい。Aクラスになりました。貴族と王族達だけのクラスのようです。」
「やっぱりね。王立学院は貴族と平民が同じ教室で勉強すると問題が起こるから、昔から教室を分けて勉強するのよ。」
「それって、貴族が平民達をいじめるからですよね?」
「・・・・」
僕の言葉が核心をついたようだ。お母様が返事に困っている。
「すみません。余計なことを言いました。」
「いいのよ。本当のことだもん。何かあったの?」
「いいえ。別に何もありませんでしたよ。」
僕は作り笑顔で返事をした。そして、すぐに自分の部屋に行ってベッドに寝ころんだ。
“あ~あ。学校って意外と疲れるんだな~。”
“アスラ!あなたよく我慢したわね。”
“何が?”
“何がって、あなた殴られたじゃない!”
“あ~。あの侯爵家の子どものこと?なんていったっけ?”
“シュバルツでしょ!”
“ああ、そんな名前だったね。別にあんなの腹も立たないよ。”
“良かったわ。私の本来の役目は、あなたの怒りや憎しみのような負の感情を食べることだからね。”
“そうなの?”
“そうよ。前にも言ったでしょ!”
“覚えてないよ。”
“大事なことなんだから覚えておきなさいよ。私が満腹状態になったら大変なことになるんだからね!”
“ふ~ん。”
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