第12話 アスラ、王立学院に入学する!
王都に来た翌日、お父様が王城に行き国王陛下から褒美をいただいたようだ。その日の夜、お父様とお母様の思い出のレストランにみんなで行くことになった。
「アスラ!今日は約束通りミリューに食べに行くからな。」
「『ミリュー』ですか?」
「そうよ。昨日馬車から見たレストランよ。」
「本当ですか?すごく楽しみです。」
その日の夕方、僕達は『ミリュー』に行った。ミリューには貴族もいたが、平民のお客達もいた。料理は店のおすすめを注文した。
「どう?このスープ。」
「お肉が物凄く柔らかいです。何の肉かな~?」
「これはブラックボアね。臭みがなくて脂身が甘いのが特徴よ。」
次に、運ばれてきた料理は橙色の穀物に卵焼きが乗っていた。
「これは何ですか?」
「これはオムっている料理なのよ。物凄く美味しいから食べてみて。」
一口食べて驚いた。穀物は甘さの中に酸味がある。
「これもすごく美味しいです!」
すると、お父様が教えてくれた。
「この料理は、大昔に他の世界から召喚された勇者様が伝えたと言われているんだ。」
「ということは、この料理は他の世界から伝わったかもしれないんですね?」
「ああ、そうさ。他にもあるんだぞ!」
お父様がメニューを見ながらいろいろ説明してくれた。オムのもととなっている穀物はライスというらしい。パンしか食べたことのない僕にとっては新鮮な味だった。それにスパと呼ばれる細長い食べ物もあり、どの料理もおいしくて食べすぎてしまったようだ。他にもいろいろと食べたいものはあったが、もうお腹に入りそうもない。
「もう、お腹いっぱいです。」
「アスラちゃんが満足してくれてよかったわ~。」
「はい。」
そして屋敷に戻った僕は、リンとロッテンシティーの郊外の森に修行に出かけた。
同じ日の夜、カザリオン侯爵家にフランクリン辺境伯がいた。
「バッハ殿。昨日、わしの手のものが王女を誘拐するのを失敗したんだが、どうしたものだろうか?」
「ハッハッハッハッ 何を恐れる必要がある。ロベルト殿。貴殿は辺境伯ではないか。例え我らの企みを知ったとしても、今の王家には何もできないさ。あの国王には、われらを敵にまわして挙兵するほどの器量などござらんからな。」
「だが、ユリウス公爵がおるではないか。彼の一門には切れ者のウイリアム伯爵がいるのだぞ!」
「大丈夫だ。あやつの領地は数年前に黒龍に襲われて、その後始末で身動きも取れまいて。」
「確かにな。それもそうだの~。ハッハッハッハッ」
「それよりも、帝国からの使者殿はなんと言っておるんだ?ロベルト殿。」
「貢物を増やせと言ってきたわ!だから言ってやったんだ。わし達に協力すればもっと貢物を増やすとな。」
「そなたは欲が深いの~。」
「それはお互い様だ。わしらの企みが成功すれば、この国を2つに分けてバッハ殿とわしが新たな国王となるのだからな。ハッハッハッハッ」
僕が王都に来てから数か月がたった。一体どれくらい魔物を討伐しただろう。討伐した魔物は全て空間収納に仕舞ってある。中にはオークキングやオークジェネラル、レッドベアにキングベアなどの強力な魔物もいた。ただ、数回は殺されたと思う。不思議なことに殺される度ごとに僕の魔力量は増加し、使える魔法も増えていった。そのため、戦闘能力が凄まじく向上している。
“リン!僕はどのくらいの強さになっているんだ?”
“そんなことわからないわよ。それなりに強くなっていると思うわよ。でも、どうしてそんなこと聞くのよ?”
“学院には僕より強い人達が沢山いるんじゃないかって、ちょっと心配なんだよね。”
“それはないわね。”
“そ、そ、そうなの?”
“当たり前じゃない。オークキングを一人で倒せる人間なんて、そんなに多くないわよ。ましてや学生にいるわけがないでしょ!”
“そうなのか~。”
“そうよ。だから手を抜かなきゃダメよ!そうしないと目立つわよ!目立つと、伯爵が言ったように政治利用される可能性が出てきちゃうからね。”
“わかってるよ。お父様やお母様に迷惑が掛からないようにするさ。”
“わかっていればいいのよ。”
そして、王立学院の入学式の日がやってきた。
「アスラちゃん。いよいよ今日から学院ね。頑張ってね。」
「大丈夫さ。アスラは人一倍勉強家なんだから。」
「そうよね。ご本もたくさん読んでたもんね。」
「行ってきます。お父様。お母様。」
学校に到着すると、ぞろぞろと新入生達が歩いている。僕はその後ろをついて行った。すると、大きな建物の中に入っていく。どうやら入学式の会場のようだ。
“アスラ!周りを見てごらんなさいよ。女の子達がみんなあなたの方を見るから。”
リンの言う通りだ。何故か女の子達が僕を見る。うっかり目が合うと慌てて目をそらすのだ。
“私の言った通りでしょ?”
“うん。なんかやだな~。”
“どうしてよ。みんなアスラに興味があるのよ。”
“僕はそんな風に見られたくないんだ。普通にして欲しいんだけど。”
そうこうしているうちに、いよいよ学院長の挨拶が始まった。学院長の挨拶はとてつもなく長かった。さすがの僕も少し辛い。そして次に、新入生代表で第1王女のマリア様があいさつをした。逆にマリア様の挨拶は物凄く短く感じた。式典が終わった後は、それぞれが決められた教室に入る。どうやってクラス分けしたのかは知らないが、僕はAクラスだった。教室に入ると貴族の子ども達ばかりが集まっていた。席は自由だったので、僕は一番後ろの窓側に座った。
「こんにちは。私はこのクラスの担当をするメリックよ。よろしくね。じゃあ、早速だけど、自己紹介をしてもらおうかな。前列からね。」
「はい。わかりました。」
最初に自己紹介するのは気の弱そうなお坊ちゃまだ。
「僕はグルマン子爵家の次男のマイケルです。よろしくお願いします。」
「はい次!」
「私はボルキア子爵家の長女のキャサリーよ。よろしくね。」
「僕はシュタイン伯爵家の3男のカールです。」
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そして、次に挨拶するのはボーイッシュな感じの短髪の少女だ。
「私はアウディー男爵家の次女のシャリーだよ。見た目はこんなだけど一応女子だから。よろしく。」
残り3人となったところで見たことのある少女が挨拶をした。
「私はスチュワート王家の長女マリアよ。この学院では身分は関係だから、気軽に声をかけて来てね。」
やはり、都に来るときに会った王女様だった。なんか予想外にフレンドリーな挨拶だったので驚いた。そして次は、前髪で顔がよく見えないが気品のある少年だ。なんとなく影がある雰囲気をしている。まるで、昔の自分のようだ。
「俺はカザリオン侯爵家の長男のシュバルツだ。よろしくな。」
そしていよいよ僕の番が来た。周りを見ると、やはり女の子達が一斉に振り返って僕を見てくる。
「僕はホフマン伯爵家の長男のアスラです。皆さん、よろしくお願いします。」
全員の挨拶が一通り終わった。やはりこのクラスには王族と貴族の子どもしかいない。しかも他のクラスは30人いるのに、このクラスは半分の15人だけだ。
“なんでみんな僕を見るのかな~?もう、目立ちたくないのにさ!”
“だから言ったでしょ!アスラは美少年なのよ!少しは自覚しなさい!”
“自分じゃわかんないよ~。容姿のことなんかどうでもいいんだけど。それより友達ができるかどうかの方が心配だよ。”
“多分大丈夫なんじゃないの?”
“どうしてさ。”
“なんとなくよ。”
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