第11話 僕は大罪人?
王都に到着した翌日、お父様は王城へ行った。僕は王都になれるために王都を散策することにした。当然、僕の隣には護衛のザックがいる。
「アスラ様。どちらに行かれますか?」
「せっかく王都に来たんだから、神様に挨拶しに大聖堂に行ってみようよ。」
大聖堂の近くまで来ると、白い服を着た人々や鎧を着た兵士達、貴族らしき人達、平民らしき人達と、大勢の人々がいた。
「たくさん人がいるね。」
「はい。この大聖堂にはこの国の大司教様がいますから。」
「そうなんだ~。大司教様ってどんな人だろう?」
「噂だと。まるで聖人のような人らしいですよ。」
「ふ~ん。」
大聖堂の中に入ると、天井も壁も立派な装飾画が描かれていた。さらに、どこかでお香でも焚いているのか、甘い香りが漂ってきた。
「参拝される方はこちらに来てくださ~い!」
「どうしますか?」
「行ってみようよ。」
「はい。」
僕とザックは一般の参拝者の後ろについていった。入り口から広い場所を通って奥に行くと、神聖な雰囲気の大きな部屋に出た。そこには巨大な女神像が立っていた。
「立派ですな~。アスラ様。」
「うん。でも、この女神様、どこかで見たことあるんだよな~。」
「そうなんですか?どこでご覧になったんですか?伯爵領にはなかったと思いますよ。」
「そうなんだよね。僕もどこで見たか覚えていないんだよね。」
参拝者が次々にお布施を渡して参拝していく。そして僕達の番がやってきた。お布施を渡して膝をついた瞬間、目の前の景色が真っ白に変化した。
「ん~。ここは?」
「よく来ましたね。待っていたのですよ。アスラ。」
「えっ?!」
目の前には石像の女神様が眩しい光に包まれて立っている。
「もしかして、ナデシア様ですか?」
「そうです。あなたに告げておかなければならないことがあって、ここに呼んだのです。」
「女神様が僕に?」
「そうです。あなたはこれから善と悪の狭間で生きていくことになります。強き心をもって生きなさい。そうすれば、あなたへの罰も許されるでしょう。」
「僕への罰ですか?どんな罰ですか?」
「あなたは不老不死になっているのです。あなたの大切な人達がどんどん年を取っていっても、あなたが老いることはありません。あなたは大切な人達を見送り続けなければならないのです。」
僕はお父さんとお母さんを失った。その時の悲しみを二度と味わいたくない。なのに、僕はこれから先も死ぬことはないのだ。お父様やお母様、それにこれから出会うだろう人々を見送り続けなければいけないのだ。
「どうして僕は罰を与えられているんですか?僕はそれほどの罪を犯したとは思えません。」
「そうでしょうね。あなたが生まれ変わる前のことですから。」
「僕が生まれ変わった?」
「そうですよ。あなたは自分が犯した罪を償うために生まれ変わったのです。」
「僕が犯した罪って何なんでしょう。」
「それは今は教えられません。時が来ればわかります。」
「どうしてですか?」
「あなたにとっての修行だからです。それを知ってしまえば修行になりません。それよりもこれから先です。あなたがどう生きるかです。あなたにとって罪を償うことは簡単なことではないでしょう。もしかしたら、再び深い闇に飲み込まれるかもしれません。ですが、あなたならきっと乗り越えられると、私は信じています。」
「深い闇ってなん・・・・・」
再び目の前の景色が変化した。
「どうかしましたか?アスラ様。」
「うんうん。大丈夫。」
僕は立ち上がってその場を後にした。それから、その日の出来事を必死に考えた。あの光景は現実だったんだろうか?それとも、錯覚だったんだろうか?『僕の罰が許される』『僕が大罪を犯した』ってどういうことなんだろう?考えてもわからない。すると、ボーとしているように見えたのか、ザックが聞いてきた。
「アスラ様。もし御気分がすぐれないようでしたら、一旦屋敷に戻りますか?」
「うん。そうするよ。」
その頃、王城では謁見の間でお父様がビクトル国王と会っていた。ビクトル国王の隣には、王妃マーガレットと第1王女のマリアがいた。
「ウイリアム伯爵。我が娘を助けてくれて感謝する。」
「もったいないお言葉です。臣下の者として当然のことをしたまででございます。」
すると、マリア王女が聞いてきた。
「伯爵様。お聞きしていいですか?」
「はい。なんなりと。」
「あの時、伯爵様の兵士達だけが先に来たようですが、どうして私が襲われているのがわかったんですか?」
マリア王女の質問にお父様は何と答えようか悩んだ。
「そ、それは・・・剣と剣が打ちあう音が聞こえたのです。」
多少不自然な回答だったが、マリア王女の興味は別にあったようだ。
「そうですか。では、伯爵様の隣にいらっしゃったのはご子息ですか?」
「はい。そうです。我が息子のアスラと申します。」
「アスラ殿というんですね。ところで、アスラ殿は何歳になられるのですか?」
「今年で10歳になります。王立学院へ入学するために連れてきたのです。」
ここで王妃マーガレットがニコニコしながらマリアに言った。
「マリアさん。あなた普段は無口なのに、やけに伯爵殿のご子息について質問するのですね。」
「そんなことありません。気のせいです。」
「まあ良いではないか。マリア。お前も今年王立学院に入学するんだろ?伯爵の子どもと仲良くするがいいさ。」
「・・・・」
すると、マリア王女は顔を真っ赤にして下を向いてしまった。その後、お父様は国王から報奨金をもらって謁見の間を出た。
一方、教会から帰った僕はすぐに自分の部屋に行った。
“リン!聞きたいんだけど?”
“私は何も答えないわよ!”
“答えないってことは何か知ってるんだよな?”
“だから言ったでしょ!何も答えないって!”
“わかったよ。でも、リンがそう言うってことは、今日のことはやっぱり現実だったということだよな~。”
“そうね。”
それにしても善と悪の狭間ってどういうことだ?考えれば考えるほど謎だらけだ。その日の午後、お父様が王城から戻ってきた。どうやら国王陛下にお礼を言われ、褒美をいただいたようだ。一体どれくらいのお金をいただいたのかは想像もつかない。ただ、領地運営に助かると言っていたから、それなりの金額をもらったのだろう。
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