『プラトーン』
『プラトーン』(映画/監督:オリバー・ストーン/公開:1986)
【あらすじ】
ベトナム戦争真っ只中のアメリカ。志願兵として、若くしてベトナムに派兵された主人公、クリス・テイラーが、戦場が自分の想像を絶する『地獄』であることを思い知り、だんだん情緒不安定になっていく姿を描いた群像劇。
【レビュー】
確かにクリスが主人公なんだけど、それは飽くまで観客を効果的に揺さぶる程度の設定であり、やはり着目すべきは、本作が『群像劇』であるということだろう。
さっきまで一緒に話してたやつが死んだかと思えば、兄貴分ポジションの人間の戦死によって理不尽なやつが上官になったり、皆がそれについて愚痴ったりする。
かと思えば、違法薬物に手を出して夜な夜な乱痴気パーティーを行ったり、上官からビールをかっさらってきたりもする。
と、いうのは飽くまでも人間サイドの味方だが、やはり特筆すべきは、東南アジアの(日本人やアメリカ人には馴染みのない)温度、湿度、圧迫感、光と影といったものが、画面の中に、実に丁寧に織り込まれているということだ。
ベトナム戦争と聞いて思い出される映画に『フルメタル・ジャケット』とかもあるのだが、『プラトーン』とは異なり、こちらは市街地戦がメイン。単純に『異国で戦っている若者たち』という視点で見ると、どちらも甲乙つけがたい。
だが、『プラトーン』の優れている点は、ほぼほぼカメラやマイクの動きに不自由を強いられるであろう密林の中での戦闘・休息・待ち伏せを描いていることだ。改めてみると、高速移動こそしないものの、本当によく被写体を定め、計算づくでフィルムに落とし込んでいる。この根性は凄いと思う。
それ故か、映像はしっかりと兵士たちの表情を捉える形をとっており、凄まじい緊張感と現実感を伴っている。
そんな中で語られる、当時のアメリカの抱える大問題。人種差別・貧困による生活格差・個人にとっての戦争とは何なのか?
まあ、アメリカ人に言わせれば、一番でかい戦争だったのは第二次世界大戦ではなくベトナム戦争になってしまうわけで、この映画がウケてアカデミー賞を獲ってしまうのも納得である。
願わくば、こんな思いをする若者たちが一人でも減りますように。
ネット界最底辺の筆者がいえるのは、精々こんなもんである。
映画とアニメと小説について岩井が言いたいことだけ言うエッセイ 岩井喬 @i1g37310
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