ぶび!? ぶーぶーぶー! ぶびっびっぴ!

 出会ったヤンキー、澤渡亮さわたりりょうは私にボディメイクをしないかと誘ったブヒ。

 なんでもボディメイクは筋トレなどで肉体改造を施して、美ボディを手に入れるための運動らしいブヒ。

 え、運動嫌なんですけどブヒ。


「毎日カツ丼食ってもいい運動だぞ」


「えっ楽じゃんやるやるブヒ」


「ただしご飯は半分だがな」


「食えないんじゃやらないブヒ」


「うるせえお前は今やるといったんだよ! うだうだせずこっち来いやあ!」


「はーめーらーれーたーブーヒー!」


 足を捕まれ引きずられながらとある部屋へ連行される。


「まさか、私をここでいやらしいハメに!?」


「しねえよ豚。よく周りを見てみろ」


 ほう、命令したか。なるほど。偉い人なんだなと思い素直に周りを見てみる。なんか機械と六角形の穴が空いてるおもそうなやつ、その他色々があるブヒね。


「なんかいっぱいあるブヒ」


「人を認識しろ!! お前本当に豚に成り下がったか?」


 周りを見直す。人がおる。男と女。2名。


「これは失礼しましたブヒ。どうもどうも。橘春といいますブヒ」


「隊長、本当に人勧誘してくれたんですね!」


「これでボディメイク愛好会が結成できますね! やったぁ!」


 澤渡君はヘヘッと鼻をこする。


「俺に任せりゃ人を連れてくるなんてどうってことねぇよ。ちなみにこいつは人じゃねえ、ただの豚だ」


「なんかいい方にトゲがあるブヒね、帰ってもいいブヒ?」


「だめだ、お前はこの部屋でボディメイクをし、豚から脱出するんだよ。痩せて綺麗になれば高津戸にも相手してもらえるかもな」


 ブヒ!? 高津戸君に!? やるブヒ、やるブヒ!


 こうして私のボディメイク生活が始まったブヒ。

 あ、二人の名前は男の子が駒崎弘樹こまざきひろき、女の子が杉野永すぎのえい、とのことだブヒ。痩せてるかな。どちらもひょろひょろ。


 さてワクワクのボディメイク初日。

 まずは身長と体重の測定。百五十五センチメートルの百キログラムと出たブヒ。豚としては良い感じだブヒ。


 そしてトレーニングを開始して五分。


 脱獄した。


「説明されていたのと違うブヒー!」


 足に鎖付けられて連れ戻された。


「説明はした! ボディメイクでも慣れるための簡単なメニューしかやってない! こんなんで逃げるな豚!」


「ブヒィ!」


ただ一週間鬼畜な所業に耐えていると、効果が出た。

五キログラム痩せたのだ。


「こんなに効果出るブヒ? ご飯は減らされたけどカツ丼食べていたブヒよ?」


「ご飯減らしたことによる脱水が主な要因だな。あとは体重があればあるほど効果も出やすい。カツ丼はご飯を指定の量にし衣を半分剥がすならいくらでも食っていいぞ」


「ブヒィ! 天国ブヒィ!」


はりきって運動をする。最初は膝に負担が来るからウォーキングからやるそうだブヒ。澤渡君指示が的確な感じがするブヒ。

愛好会になって先生が就いたけど全く意味をなしてないので以後無視するブヒ。


はりきって運動すると、運動しただけ効果が出る。

最初の一ヶ月で十キログラム痩せたし、腕立て伏せからベンチプレスの棒だけ――これだけでも二十キロあるブヒ――をスコスコやらせて貰えるようになったブヒ。本格的な機械はもう少し先なんだってブヒ。


「ある程度筋肉がないと事故起こすからな。豚は全くと言って良いほど筋肉がなかったからそう簡単には機械を触らせられねえ」


へーそうなんだと思いつつ二回目の脱走。


「お肉中心の生活とはいえご飯食べたいブヒィ! 米を食べることはデブの生きがい、デブの使命なんだブヒィ!」


「そろそろ豚カツのご飯量量増やしていいぞ」


「もどるブヒ」


「五十グラムな」


「だまされたブヒ」


そんなことをやって二ヶ月。駒崎君が若干筋肉付いてたくましくなったブヒ。凄いブヒねーパチパチパチ。


三ヶ月目。私がなんと二十キロ痩せたブヒ!


「百キロあったのが現在八十キロブヒ!」


「なあ、ボディメイクは効くだろ」


「凄いブヒー、これなら高津戸君が愛するスリム体型になるのも夢じゃないブヒ」


クラスでも私が痩せていることは凄いニュースになっていて。


「豚ちゃん、凄い勢いで痩せてるね! これならこの一年でスリムになれるんじゃない?」


「ホントホント、痩せた豚ちゃん見てみたいなあ」


「もーのぞみんにことにゃんはお世辞が上手いブヒ。でも本気で頑張るブヒ。それで聞いて欲しいんだけど」


「なになに?」


「もう豚ちゃんって愛称は止めて欲しいブ、止めて欲しいんだ。もう私は豚じゃなくて、ただのデブだからさ」


「ぶたちゃ、春ちゃん……!」


この一件はクラス、いや学年中に知れ渡り、豚ちゃんと呼ぶ人はほぼいなくなった。大月新葉のグループを除いては。


ここから過酷な追い込みが始まったのである。

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