豚は豚のままでいろ? 嫌ですふざけんな。豚小屋から脱獄して、憧れのかれぴっぴに告白して添い遂げるんだブヒ!

きつねのなにか

ぶひぶひぶーひぶひ

それは春うららかのカツ丼が美味しく食べられる陽気の出来事であったブヒ。

いつもと同じように三階に上がる階段の踊り場で、のぞみんとことにゃんと一緒に昼食を食べていたんだブヒ。今日はカツ丼二段盛りだブヒ。大量大量ブッヒッヒ。でも三段でもよかったかな? そんな昼休み、とある声が聞こえて来たんだブヒ。


橘春たちばなはるってあの豚でしょう? あんな人がまさる様を好きで居ること自体がおぞましいんですけど。豚が人を好きになるんじゃないわよ!」


こ、この声は茸筍論争高校の二年女子カースト最上位の大月若葉おおつきわかば様の声だブヒ!

なんで私が高津戸優たかつどまさる君のことが好きなのを知ってるブヒ?


「ブヒブヒうるさいしさあ! 高津戸君かっこいい高津戸君かっこいいってうざったらしいしさあ!! 好きって言っているもんじゃないの! 豚は豚らしく豚と結婚しなさいよね!」


自分で言ってたブヒいいいい!


「もうさ、自分が豚なのネタにしてるんなら大人しく残飯食ってなさいよ!!!」


ごめんなさいカツ丼食べてますブヒいいいいいい!!


「一切優様には近づかないで欲しいわよね。優様はワタクシの未来の旦那様なの」


うっとりした声で最後を締めくくった大月さんは、ぞろぞろと靴音を従えて去って行った。カースト上位は下位の物を引き連れ歩くって本当なんだブヒね。


「さっきのはなんだブヒ? 脅迫ブヒ?」


「嫌がらせには違いないよ。邪魔すんな豚ちゃんってことでしょ」


大迫希おおさこのぞみ、通称のぞみんがそう説名する。そう、私の愛称は豚ちゃんである。


「でも私のカツ丼は渡さないブヒ!」


「だれもそこには言及してないよ……」


森口琴もりぐちこと、通称ことにゃんがフォローする。


私はこの二人の介護無しでは生きられないブヒでござるなあ。


「でもさ、豚ちゃんにも笑いかけてくれる高津戸もさ、クラスメイトだから親切であって、豚ちゃんが豚ちゃんのままだと望みないかもよ」


「ブヒッ!? そんなことないブヒよのぞみん! 私を見る目は真剣だブヒ!」


「言い方悪いけど、真剣に豚だなあこのデブって思ってるんじゃないかなぁ」


「ことにゃん辛辣ブヒ!?」


ひどいなーガハハ、と笑い飛ばし、カツ丼二段盛りをペロッと平らげる。

昼寝したら午後の授業に備えるブヒ-ブヒブヒ。


午後の授業はブホホホホ。豚って三歳児くらいの知能を持っているので、私もそこそこ知能があるんだブヒ。まあまあ理解出来るのでまあまあ昼寝タイム。ブビー。グゴー。


気がついたら放課後なので豚カツ定食を食べに下町へGO!


「あ、豚ちゃん帰るの?」


た、高津戸君に話しかけられた!


「ブヒッ、高津戸君ッ。そ、そうなんだブヒ、今日は豚カツ定食食べるんだブヒ」


「へーそうなんだ、行ってらっしゃい、豚ちゃん」


「ブ、ブヒーーーーー」


高津戸君に後押ししてもらった私は豚カツ屋「共食い」に転がるように入店! ロースカツ三枚定食を頼む!


「あんまり食いすぎるなよ、ロースカツ三枚定食おまち!」


「はーいだブヒ。あんまり肥え過ぎちゃうと動けなくなっちゃうブヒね」


むさぼるように食べて満腹満腹。つまようじでしーしーやって、転がるように帰宅。今日も高津戸君と喋れて良い一日だったブヒ。


そんな幸せが続いたある日、事件は起こった。


私が階段でお昼を食べているとき、高津戸君が大月若葉に階段の入り口に呼び出されて問い詰められたのだ!


「高津戸君、あなたどういう人が好みなのかしら? ワタクシ好みの人になってあげますわーオホホホ」


「そ、そうだね、えーと、や、痩せている人かな」


「あら、じゃデブの春さんはお呼びじゃないってことね! なんで良くしてあげてるの? あ、わかった、あまりにも哀れだからね! オホホホオホホホ!」


「そ、そうだね、はは」


なん、なん、なんだってブヒー!


高津戸君は痩せている子が好み……。私は哀れだから接してるだけ……。


「高津戸君はどこの大学へ行くつもりなんですの? ワタクシは推薦で名門の令和科学大学へ行くんですのよ」


「僕は令和大学かな。今のところ良いペースで勉強は進んでいるよ」


「なるほど、あの豚は遠く及ばない大学ですわね! オホホホ! オホホホ!」



はわわわわわわ、はわわわわわ。

二人共頭が良い。私には無理な大学だブヒ。


「ありがとうございます高津戸様、これで御用は終わりですわ、ありがとうございました。一緒に学年の廊下へ参りましょう?」


オホホホ、オホホホ、と言いながら階段を登ってくる大月若葉と高津戸君。とっさに上階へ逃げる。


「でーぶはざこー、でーぶはざこー」

「ぼ、ぼくはそんなにざことか思ってないけどね」


ぐ、ぐ、言い返せないブヒ……。私は雑魚ブヒ。


「これで一人始末っと。オホホホ」


放課後、腹ぺこふらふらの状態で屋上に上がる私。もう飯なんて食えないブヒ。そう思いながら購買の菓子パンを食べる。これはおやつ。


横になり空を見上げる。お空はどこまでも蒼く、美しかった。


「私も美しくなれば、振り向いて貰えるかな」


そうおセンチになっていた時であった。


「おめー、俺の縄張りで何しとんじゃ」


ぬっと頭上にヤンキー姿の男が現れる。

ブレザー指定の高校なのに学ラン着てるしリーゼント決めてるしこいつはヤンキーに違いない。


「ヤンキーゴーホーム、ブヒ。私はおセンチな気分なんだブヒ」


「ああ? おめーオレが怖くねーのか、おもしれー女。なにがあったか話してみろよ」


ブヒブヒと事情を話す。


「あーつまり、デブには興味ないぜバーカって暗に言われたんだな。まあ、デブはモテねえ」


「デブでも私は豚ちゃん可愛い可愛い言われてるんだブヒ!」


「でもそれ恋愛感情入ってるのか? 入ってねえだろ。マスコットとして可愛い言われてるだけだな」


ぐさぁ! 豚ちゃんの心臓に万のダメージ!

豚ちゃんは息絶えた!


「事実を述べただけで気絶してんじゃねえよ」


「もうだめブヒ。クソデブメガネとして生きていくブヒ」


そこでヤンキーは少し思案すると。


「なあ、ボディメイクしてみないか」


夢の言葉を唱えてきたのだ。

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