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本当に現地調達で食材を集めてきたセレネの手料理を食べてから、私は改めてこの大きな屋敷を探索した。
そしてわかったのは、ゲーム内で所持していたアイテムのほとんどが残っていること。
アバター類はクローゼット、武器や防具、レアドロップ品は宝物庫、いらないドロップ品は地下の倉庫に大量に会った。この邸に地下室があるなんて知らなかった。
後はメイン、サブキャラで持っていたお金がすべてこの国の通貨換算で宝物庫の宝箱にあったり、大浴場があったり、書庫があったり、いろいろ変わっている。
困る要素としては台所の棚に調味料しかなかったり、そもそも屋敷が広すぎて管理できなかったり、その辺だろうか。
まあ、少なくとも食材さえ確保できれば、生活する分には何も困らないだろう。
「ところでさ、この家ってどうしたの?」
「ルナちゃんを転生させるってなってから私が買ったの。まあ、ちょっとした誕生祝ってことで」
「ちょっとしたって……」
少なくとも二~三世帯は一緒に住めそうな広さだし、庭も軽く庭園くらいの広さはあるけど。
「お金は有り余ってるからね。それに、迷惑料も兼ねてるから気にしないで」
「気にするなって言われても気になるけど……まあ、ありがたく受け取るね。ありがとう、セレネ」
「はい、どういたしまして。じゃあ私、この後用事があるから帰るわ。夜にご飯作りに来るから。それと、明日一緒に生活に必要なもの買いに行きましょ」
「うん! じゃあ、帰ってくる? の楽しみにしてるね。行ってらっしゃい」
予定があるらしいセレネを見送って、私は私室に向かった。
とりあえず暑苦しい軍服を脱いで、クローゼットの中にあったオフショルダーのサマードレスに着替える。ファンタジーらしい衣装もいいけど、厚手の生地で長袖の服は流石に暑かった。
「さて……」
着替えたところで、今度は書斎に向かう。
書庫の本棚にはしっかり本が並んでいる。ジャンルは四種類、童話、歴史書、魔導書、料理本だ。言語は当然この世界の文字だけど、なぜか理解できる。
せっかく理解できるし、読むのは当然魔導書だ。
内容は魔術の使用方法が書かれた本——つまるところ教科書である。
せっかく魔術が存在する世界に来たのだから、使えるようになりたい。
ということで、私は初級と中級の魔術が書かれた魔導書を取って、書斎の机に置く。
こういう部屋で本を読むのは何年ぶりだろう。小さい頃はよくお父さんの書斎で本を読んでいたけど、ネトゲを始めてからは入ってすらない。
やはりこういう場所で本を読むのは好きだ。なんというか、落ち着く。これで珈琲とお菓子でもあれば最高なんだけど。
まあそんな贅沢は明日から味わうとして、今はじっくり魔導書を読んで、セレネが返ってくるまで魔術の勉強でもしていよう。
ずっと魔導書を読んでいると、気づけば外が暗くなっていた。
本を閉じて、ぐっと背を伸ばす。
そろそろお腹が空いてきたし、セレネが来ないかなぁと窓から門のほうを見ていると、馬車がこちらに向かってやってくるのが見えた。
やっと来てくれたと、私は走ってセレネを迎えに行く。
門の前で待っていると、彼女は馬車から荷物を持って降りてきた。
「おかえりー!」
推しがこうして私の家にお泊りに来るって、よく考えたらヤバいな。
しっかり気分転換も出来たおかげか、それどころじゃなかった分、今になって一気に嬉しさが押し寄せてきた。
「待ってたよ! えへへ、なんかセレネにお帰りって言うのちょっと変な感じするね。大好きな推しにおかえりって言うの、不思議な感じ。えへへ、ほんと嬉しいや」
「すっかり元気になったみたいね。よかったわ」
「うん。お陰様でね。って、なんか荷物いっぱいだね」
「ご飯ついでに、せっかくだからお泊りでもしようかと思って」
「お泊り⁉ あっ、ヤバい、もう楽しくなってきた」
「気が早いわね」
「だってセレネとお泊りだよ? それに、お泊り自体初めてだから……」
「そっかそっか。じゃあ初めては最高の思い出にしないとね」
セレネは笑顔を浮かべると、『それじゃあ、まずは最高のご飯を作るわよ!』と息巻く。
お昼に作ってくれたご飯は相当美味しかったので楽しみだ。
私はセレネの荷物を受け取って、部屋に置きに行く。来客用の部屋はあるけど、私の部屋でいいよね。せっかくのお泊りなんだし。
後はお風呂の用意もしたほうがいいかな。
「おっふろ~おっふろ~♪」
セレネと一緒にお風呂入れるのかな。
今の体なら何ら恥じらうこともないし、裸の付き合いを楽しめそうだ。が、そもそもの問題として、お湯の貯め方がわからない。
それっぽい所に石が埋め込んであるけど、これは魔導書に記載のあった魔石だろうか。そうだとすれば、ここに魔力を流せばお湯が出るんだろうけど……その魔力というものはまだわからない。
試しに触ってみるけど反応はない。
中二病を拗らせかけた頃に「実は私って超能力使えるんじゃね?」って試した時の感覚でやるけど、まあ当然反応なし。
せめてこれくらいは私がと思ったけど、お湯を貯めるのもセレネに任せよう。
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