第42話 イヌ=ユーリの配下?
俺――
最初はなぜか距離を感じるアリシアたちだったが、普段のように接してほしいとお願いしたところ、彼女たちはそれを受け入れてくれた。
その後、お互いに用事も済んだということ、『冒険者の町グラントリー』に帰還する流れになったのだが――
(何か、大切なことを忘れているような……)
そう思った矢先だった。
『バウッ!』
「っ、急襲ですか!?」
聞き慣れた鳴き声が響いたかと思った直後、アリシアが警戒したように剣を抜く。
彼女に遅れて俺も視線を向けると、そこには艶のある白色の毛並みが特徴的なイヌがいた。
そうだ! 色々なことがありすぎたせいで、コイツのことをすっかり忘れていた!
「待ってくれ、アリシア。そのイヌは俺の連れなんだ」
「えっ? ユーリさん、それはどういうことですか? というより、イヌというのはいったい……」
「ちょっと、アリシア!」
何かを言おうとしたアリシアだったが、ティオが彼女の手を引き後ろに下がる。
そしてまたもや『晴天の四象』の四人が集合していた。
「聞いて、皆。どうやらユーリはアレを犬として主張し続けるつもりなの。さっきあたしが聞いた時から一貫してね」
「はあ? どういうことだ、ティオ? どっからどう見ても、アレは犬じゃなくてフェンリルじゃ……」
「……もしくは、わざわざそう主張する理由があるのでしょうか?」
「わたしには分かった。わたしたち冒険者にとっては最強の魔獣であるフェンリルだけど、過去の文献によれば神に仕えた神獣だったという説もある。そこから推測するに、あのフェンリルはユーリに仕える存在であり、ユーリが神であることと同じように、その正体を隠そうとしているのだと考えるのが自然」
「「「それだ(です)! さすが賢者!」」」
「えっへん」
何やら賑わっているようだが、距離があるため、何を話しているのかまでは聞こえない。
それよりも俺は、イヌに意識を割くことにした。
「今日は手伝ってくれてありがとうな、イヌ。また時間を見つけて会いに来るよ」
『クウゥ~ン』
別れの挨拶を告げるつもりだったのだが、イヌはなぜか物悲しそうな鳴き声を返してくる。
そんなに俺と分かれるのが悲しいのだろうか?
くっ、なんて友達思いなイヌ……いや、イッヌなんだ!
感動する俺だったが、イヌはそんな俺の襟を掴んだと思えば、グッグッと引っ張ってくる。
何だろう? まるでどこかに連れて行こうとしているみたいだ。
「フェンリ――イヌがどうかしたのですか、ユーリさん?」
するとちょうど、そのタイミングでアリシアが声をかけてくる。
「ああ、どうやら俺をどこかに連れて行きたいらしい。悪いんだが、帰る前に寄り道させてもらってもいいか?」
「それは構いませんが……」
許可を取れたということで、俺たちはイヌの案内に従って移動した。
そうして俺たちがやってきたのは、かつてイヌと初めて会った時にも連れてきてくれた巨樹の麓だった。
ただし、依然とその様相は大きく変わっており……
「……これは、ひどいわね」
ティオの呟きに俺も同意する。
イヌの住処であったはずの巨樹は、根元からポッキリと折れていた。
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